第8話 初めての魔物退治

 森に行く途中でライマインさんが色々と教えてくれた。

 ラインマンさんは魔法を使えなかった。簡単な魔法を含めて、魔法を使える人間は半数らしい。怪我の回復は手持ちのポーションみたい。擦り傷や切り傷は数秒で治る。麻痺や毒の状態異常も治せる。でも大怪我は神聖魔法でしか治せない。


「人間の生活圏にいる魔物はほとんどが下位魔物だ。リーフウルフも下位魔物だ。簡単に倒せないとハンターにはなれない。ハンターを目指すなら、街道の護衛ができる実力はほしい。魔物は集団でも現れる。仲間と一緒に護衛するのが一般的だ」


「徐々に生活の範囲を広げてみる。まずはこの周辺の魔物を倒したい。下位魔物がいるのなら、もっと強い魔物もいるの?」

 イロハ様の世界では、どの程度まで魔物は強いのだろうか。

「ダンジョンには中位魔物が存在する。ダンジョンは魔物の巣窟だ。上位魔物は数十年に一度出現する。国や人間の生活を脅かす。上位魔物は今まで討伐された記録はない。暴走した魔力がなくなって、自然消滅を待つしかない強さだ」

 上位魔物は元の世界の破壊兵器並みね。


「いつの間にか消えてしまうの?」

「あまりにも力が強大だから消えるという説が一般的だ。だが確かめる術はない」

「上位魔物は怖いのね。でもダンジョンは少し調査したい」

「まずはリーフウルフからだ。森の中に縄張りを持っている。単独か少数でいる。怪我だけはするな。リリスールに怒られる」


「遠隔用の攻撃魔法で倒すね。魔物を見るのは初めてだから今から楽しみよ」

「アイは変わっている。ハンターギルドに来た時点で普通ではないか。でも俺は実力主義者だ。大人でも子供でも大歓迎だ。そろそろ縄張りだ」

 ライマインさんの後ろに続いた。プレシャスは大人しく横を歩いていた。


「リーフウルフだ。三匹いる。全て倒せば完了だ」

 遠隔用と接近用の攻撃魔法で、それぞれの威力を試したい。両方とも宝石魔図鑑に書いた威力で試す。作戦が決まった。

「二匹は遠隔用の攻撃魔法で倒したい。一撃で倒せなくても連続で魔法が使えるから平気よ。残りの一匹は接近用の攻撃魔法で倒す」


「接近戦で魔法は不利だぞ」

 魔法は外せば敵が近づいてくる。接近戦になれば物理攻撃が有利よね。普通は近寄られる前に倒すのかもしれない。でも私の魔法は普通とは異なる。

「防御もできる魔法だから平気よ。実際に見せたほうが早いと思う。星剣ルビー」

 問題なく発動できた。出現した剣を握った。ラインマンさんの動きが止まった。困惑している様子だった。


「俺は中級ハンターだ。魔法は使えないが何度も見ている。だが今の魔法は何だ。呪文も変わっていた。剣の形を造る攻撃魔法も意味がわからない」

 ライマインさんが混乱していた。イロハ様の世界に存在しない魔法だった。下手に誤魔化すよりも堂々とした発言がよさそう。


「私の国では当たり前の魔法よ。逆に私はザムリューン国の魔法を知らない」

「異国の魔法か。リリスールが常識を知らないと言った意味がわかった。今は試験中だった。先ほどの作戦で構わない」

「遠隔用の攻撃魔法を発動する。紅球ルビー」

 真っ赤な塊がリーフウルフへ向かった。到達した瞬間にリーフウルフが消滅した。弱い魔物なら一撃で倒せる威力はあった。


「初心者以上の攻撃魔法は使えそうだ。少女と侮って悪かった」

 残りの二匹が向かってきた。

「紅球ルビー」

 リーフウルフに命中して消滅した。残りの一匹が近づいてきた。リーフウルフは緑色の体だった。毛が波打って、のこぎりの歯を思い出させた。大きさは大型犬くらい。無我夢中で剣を振った。一撃でリーフウルフが消えた。


 剣の威力も申し分なかった。魔法の剣だからか私の腕力でも倒せた。今頃になって少し恐怖心が沸いてきた。

「見事だった。アイの腕なら問題ないだろう。自素石を拾って戻るぞ」

 自素石は無色で大豆くらいの大きさだった。

 初めての魔物退治が終わった。街へ入ると、私を祝福するように鐘が鳴った。

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