第40話 優樹達の製造メーカー、その名も(株)ボーク テックス。

 う〜む、気分が落ち込んでいたり弱気になっている時に、自分より愚かな行動をしている人物を見ると、何故か冷静さを取り戻せる気がする。

 そうゆう意味ではじいちゃんに感謝だな、ほとんど反面教師的な意味で。


俺「さて、それでは心を切り替えて俺の第3の相棒であるフォン リベリアのお披露目の儀式を開始しますか。」


 俺は狼少女フォン リベリアのフィギュアをケースから出して、ヲタク部屋のディスプレイの前に立たせると魔導書を呼び出した。

 優樹とクラリッサもフォンのお披露目に立ち会って貰おう。


優樹「将吾君! これからフォンもボクたちの仲間になるんだね!」


クラリッサ「私も元はこのフォンと同じ人形であったのだな…何かとても不思議な気持ちではあるが、まあ良い…仲間が増える事は良いことだ。」


 優樹達が、鏡を持ってスタンバイしている。

 う〜ん、ダンジョンでの凛々しさとは全く違う少女らしい可愛さだ!

 2人共にワクワク感が半端ない、カトやん撮影宜しく。


カトやん「まあ、僕はフォン フォンの躍動が見られればそれで良いのですが…前から思っていたのですが、シバやんの状況によってコロリと意見を変えるその切り替えの速さは、柴崎家の血筋だったのですね。」


 何を言っているのだカトやん、現実だろうとダンジョンだろうと状況は常に刻一刻と変動しているのだ。

 目の前に棍棒を持ったゴブリンが立ち塞がれば優樹達と全力で戦い、特殊警棒を持った鷲尾代表が立ち塞がれば全力で土下座する。

 常に我々は前に進む事を考えねば優樹達5人を揃える事は出来んのだ。

 昔あったくだらない出来事など、さっさと記憶の彼方にポポイっと追いやってしまうのだ。

 優樹とクラリッサが見守る中、3番目の相棒を正面に見据えて、声高らかに口上を述べた。


俺「よ〜し、それではフォン リベリア! それが君の名だ! 君は優樹やクラリッサ、そしてあと二人増えるであろう仲間達と共に…俺も入れてね、ダンジョンで戦ってもらう事になる。

 そしてフォンに求める役割は、ズバリ索敵や気配察知など敵から不意打ちを喰らわない為の行動と、背中に背負った竜骨ブーメランでの仲間の戦闘補助だ。

 やってもらう事が色々あるが、お前には頼れる仲間達が隣に居る事を絶対忘れないでくれ。

 それでは、そのフッサ フッサでモッフ モッフな尻尾で俺を癒やしつつ仲間と共に頑張ってくれ!

 クリエイト ゴーレム!」

 

 魔導書から浮かび上がった赤いクリスタルがフォンに吸い込まれて行く。

 何度見ても不思議なファンタジーの世界だな、魔力がフォンに流れるのを感じると同時に3番目の相棒になって行くのが解る。

 3度目だが、ディスプレイの電源を入れアニメ[ 異世界幻想伝 フレイリアーナ ]を1話から再生する。

 もうすぐ、フッサ フッサの尻尾と共にワッフ ワッフと元気に叫ぶフォンに会えると思うと…。


「いーくーよー! イッチ、ニィ、サン、シィー、GOォー!」


 電話? この忙しい時に…もしかしてさっきのヨーコさんからか?…違った、送信相手は春奈からだった。

 何の用かな? 待って来てくれた豚汁の鍋は洗ってから返すぞ。


???「将吾か? 俺だ! 春奈から聞いたぞ! 裏山の祠からダンジョンが発生したんだってな! 上司に言ったら国から調査団を派遣してくれるそうだ! 来週の火曜日にソッチに行くからお前もその日空けとけよ!

 それから、あんまり危ない所に春奈を連れ回すなよ! もし何かあったらお前に責任を取って春奈を……うおっ!

 もしもし将吾兄ぃ、春奈です。

 お父さんが馬鹿な事言っているけど気にしないで、お父さんにノエル見せたら知り合いの調査団に直ぐアポイント取ってくれたらしくて、急で悪いんだけど来週火曜日にソチラに行きます。

 時間が決まり次第すぐ連絡するから詳しくはその時に。

 何かそっちも忙しいそうだから、それじゃ切るね。」


 俺の伯父、春奈の父親[ 裕也 ]さん(市役所勤務 柔道マッチョ)からの電話だった。

 相変わらず声でけぇ、来週、国の調査団と来るらしい、お茶菓子とか用意しとくか? ともかく国からの連絡なので、我が鷲尾代表に報告しておくか。


鷲尾「…そう、分かったわ。

 有難う柴崎君、すぐ報せてくれて…でも、ご親戚が市役所勤めで調査団派遣出来るなんて、随分話しが早過ぎるわね。

 あと2ヶ月は掛かると思っていたけど…まぁしょうがないわ、コチラでも仕事を前倒しして進める事にします。

 明日一番に鷲尾家の地上げ…土地交渉班と測量士連れて柴崎君の家に行くから時間開けておいて。

 それじゃ柴崎君あまり危険な事はしないように。

 それじゃあ、詳しい事は明日ね。」


 電話は切れた、明日は鷲尾代表が襲来なさりやが…来られるそうだ、やっぱりお茶菓子が必要か? 

 うん? 隣でカトやんが何か? 言いたい事が有りそうだな?


カトやん「あのですねシバやん、昨日はシバやんが調子悪そうだったので言いませんでしたが…実は昨日、(株)ボーク テックスさんから連絡が来ていたのですよ。」


 (株)ボーク テックス? それは優樹達のアクション フィギュアを製造販売している制作会社でないですか!

 勝手に[ チューバーズ UP ]に優樹達の動画を投稿したから苦情が来たのか? それは不味い、全力土下座の準備を…いや、ここはジャンピング土下座にした方が良いか?


カトやん「いえいえ、逆のようですよ。

 優っきーの動画がバズって3次販売予約数が予想を遥かに超えたとの事で、一度合って我々にお礼を述べたいそうです。

 何かお土産も用意してくれるそうなので、シバやんコレ受けて大丈夫ですか?」


 制作会社からのお土産有りとな…とても心惹かれる言葉だな。

 明後日以降ならば何時でもお待ちしております、と伝えて下さい。

 さて、優樹達は今どうなっているだろうか? 3番目の相棒フォンの調子はどうかな? 

 未来に向かって何かが進み始めたような気がした。


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蒼のじゅんなまです。

 我々も未来に向う為に、出来れば♥と★をお願いいたします。

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