天使の笑顔で

ゆる男

第1話・入学


『ねえ、もっとこっちに来てよ』


誰だ?

目の前に誰かいる

顔は薄暗くて見えない

見知らぬ女の子が手を広げて俺に何かをねだっていた

よくわからないけど俺は抱きしめる


『……聞こえる?』


そう言ってきたが何も聞こえない

けど俺は女の子を抱きしめてるということにハラハラしてしまう

あーずっとこのままで居たいな


「ねえ、聞こえてる!?」


ん?何が?


「ねえ、起きてよ」


女の子の声が次第に大きくなる


そして


「起きろーーーー!!!!」


「うわーーー!!!!」


俺は夢の中ではない女の子の声で朝の7時に目が覚めた

俺の名前は碇涼真

今日から晴れて高校生になった俺は叫んで目を開ける


「もう、いつまで寝てるの!今日入学式だよ?」


眉間にシワを寄せて顔を覗かせるこの女の名前は


矢部まもり


俺の隣の家に住んでるいわば幼馴染だ


「おいまもり!俺が夢の中で女の子とイチャイチャしてる時になんで邪魔すんだよ!」


幼馴染に起こしてもらいながらキレる俺に対して


「はあ??わけわかんないこと言わないでもらえる?

早く着替えて行くよ」


「早くって今から俺が着替えるの見たいのか?

きゃー!えっちぃー!」


「そんなの見たくもないっての!」


まもりは立ち上がり俺の部屋のドアを勢いよく閉めた

そんな梅干しみたいにカリカリすんなよなー全く


着替えを終えてリビングに行く

制服姿もなかなかカッコいいもんだな

学ランじゃなくてブレザーでよかった

なんて思いながらテーブルに置いてあるメロンパンを取って頬張る


「んじゃいってきまーす」


メロンパンを食べながらも俺は母さんに聞こえるように言って玄関を出た


「んもー!遅いってば!」


「大丈夫だって、まだ間に合うんだからさ」


気の早いやつだな

まもりはめっちゃ頭いいけど俺に合わせて高校を選んでくれた

高校受かるまで勉強見てくれたり色々してくれたけど

また同じ高校となると騒がしくなりそうだな

そんなこと思いながら学校まで歩いて行くと


「ねえねえ涼君」


出来れば涼君って呼び方やめていただきたい

でも俺は気にせずまもりの声に反応する


「なんだよ」


「同じクラスになれるといいね」


目を輝かせるようにまもりは言う


「お前なー、俺の他に友達出来ることを考えろよ

せっかくの高校生活なんだからさ」


「んーーそうだね」


何故か納得いかないような顔している


早いもんで、10分くらいして学校に着く


朝暮高校


ここが俺の青春に花を咲かせてくれる場所か

校門を通ると人がずらーっと並んでいる

さーーてまずやることは?


「ひゃっほーー!!女の子がいっぱいだー!」


騒ぎながらも俺は校門の坂を登る

顔も知らない女の子がいるとそれだけでテンションが上がる


「涼君、変なことしないでね?」


「わかってるよ、えーと?可愛い子可愛い子」


「もう、知らない」


可愛い子を探している間に

掲示板みたいのが立っている

あれはクラス表か?


「おーい!まもり!クラス表見てこようぜ!」


俺はまもりの手を引いてクラス表まで走る


「ちょ、ちょっと危ないって!」


通れないくらい並んでいるクラス表の前に無理矢理入り込む


「えーっと?俺の名前はー」


「あ!涼君あったよ!3組だってさ」


「おぉー!マジか!まもりは?」


「私は……3組にはないかも」


「ええーーなんだよーまもりもこっち来いよ」


まもりは口うるさいけどめっちゃいいやつ

だから同じクラスになって自分勝手な俺をなるべくサポートして欲しいんだけどな


「隣の2組だったよ」


すごく残念そうな声でまもりが言う


「そっかー

まあ家も隣だしちょうどいいんじゃないか?」


「まあそうだよねー」


しょぼんとするまもりに俺は


「まあまあ落ち込むなって

毎日俺を起こしてくれ」


「は?なんで毎日?」


あれ?不発か?


「まあいいや、じゃあ教室行ってくるわ」


「ねー!置いてかないでよ!」


まもりと別れて1年3組の教室に入る

教室に入ったはいいがなんなんだこの雰囲気…

葬式みたいに静まり返り

終いには高校生活の始まりで寝てる奴もいる

なんて奴らだ

そんなことを思いながら席に着く


そしてしばらくすると

俺の席の隣にチャラそうな男が座ってきた

チャラ男は席に座って早速


「あ、」と俺を見て言う


なんだよー!俺の顔になんか付いてるのか?


「どうした?」


何か言いたそうにしていたから話しかけてみると


「涼真?」


とチャラ男は言う

な、なぜ俺の名前を知ってるんだ!?

ストーカーか!?


「ほら、入試一緒だったじゃん

俺、岡本葉月」


入試?


「あーー!思い出した!

あの時のチャラ男!」


「誰がチャラ男だこのやろ!」


そうだ、入試でも隣で喋りかけてたんだ!

ノリのいいやつだと思ってたけど完全に忘れてた

馴れ馴れしく絡む俺を許してくれ

では早速葉月と友達になったということで

こんな質問をしてみる


「葉月、可愛い子いるか?」


何かを期待して俺は葉月に聞くと


「おー、いるぞ、

見てみろよあの子」


ん??

葉月の指さす方へ視線を向けると


「か!」


窓際で友達と仲良く話してる めちゃくちゃ可愛い子が居た

可愛すぎて"か!"しか出てこなかった

ちょっと待て、緊張してきた

落ち着け、落ち着け涼真


「よし、葉月、行くぞ」


「おう」


俺と葉月は可愛い子がいる元へ向かう


「ねえ、君達!」


軽いノリで話しかけると

可愛い子とその友達は一斉にこちらを見る


「ん?なあに?」


可愛い子の第一声

かかかか!かわいすぎぃぃぃ!!!

そんな可愛い声の人いますかーー!!!!!


「どうしたの?」


「いや、ほら、高校に入ったばっかだし、友達欲しいなって」


葉月は何も緊張してないのか自然と可愛い子と話している


「みんな仲良くだよねー」


可愛い子がニコッと笑う

はいかわいいーーー笑顔かわいいーー

反則級だ。


「そうだね、仲良くしよう!

名前なんて言うの?」


葉月がぐいぐい聞いてくる


「花沢まゆです。よろしく」


「よ、よろしくぅーー」


俺が必死に絞り出した言葉がたったのこれだけだった

くそ、緊張が解けん


「隣の子は名前なんて言うの?」


葉月がまた慣れたように隣の子に聞く


「森崎可奈です。」


可愛い子の隣の子が答える

この子はわりと大人しそうだな


「可奈ちゃんかーよろしくね

俺は岡本葉月、んでこいつは碇涼真だ」


「よ、よろしくぅーー!」


同じ言葉しか言えない俺

何をしてんだ!!

ちくしょー!緊張が解けん!

だがここで終わるわけにはいかなかった

ナンパした女の数10と5人

振られた数10と5人

さりとてこの学校生活あるいは涼真の人生に

一切の逃げ傷なし!!


見てろ!葉月!

これが俺の本気だ!


「可奈ちゃんは彼氏いるの?」


と、俺は言った

へ?可奈ちゃん?

そっちじゃないと思いながらも気づいた時には遅かった


「いないよ?」


可奈ちゃんが答える

そおおおおおおですよねえええええ!!!

俺が可奈ちゃんって言ったから可奈ちゃんが答えるの当たり前ですよねええええ!!!

俺が聞きたかったのはこっちの可愛い子だったのに

完全に俺が可奈ちゃんを狙ってるみたいな空気になる


しかしこの空気を遮ったのは


「ねーねー!じゃあ2人とはもう友達だよね?」


可愛い子が俺と葉月にとびきりの笑顔を向けて言う


「も、もちろん!」


まだ緊張している俺だけどそう答えた


「やったー!高校生になってこんなに友達できるなんて思わなかったよー」


両手を拳にして腕を思い切り上げる可愛い子


「よし、んじゃLINE交換するか!」


葉月がナイスなことを言って

可奈ちゃん、可愛い子、葉月のLINEを交換した

俺も満足じゃ


入学式も終わり

先生の話を適当に聞いて

まもりと一緒に帰る


「ルンルン♪ルンルン♪」


上機嫌にスキップする俺を見てまもりが一言


「きもちわるーい」


「うるせーぞ、まもりは今の俺の胸の高鳴りを抑えることは出来ない」


「はいはい、可愛い子でも見つかったのね」


さすがまもり、よくわかってらっしゃる

そんなことしてると


「おーーい涼真ー!」


後ろの方から俺の名前を呼ぶ男がいた


「おー!葉月!」


新しく出来た友達葉月がいた


「おー、もう帰るのか?」


葉月がニヤニヤしながら俺に言う

多分まもりを彼女だと勘違いしてるんだろうな


「まあな、じゃあまた明日な」


と俺は帰ろうとしたが


「おう、じゃあ俺まゆちゃんと可奈ちゃんにボウリング」

「ボウリング!?まゆちゃん!?

あの子そんな可愛い名前だったのか!?

ボウリング行くのか!?今から!?

まゆちゃんって名前だったのか!?」


俺はまゆちゃんという言葉に光の速さで反応し食い気味に葉月に言った

葉月は嫌な顔をしながら


「さっき自己紹介してただろ

んで、ボウリングは今誘うところだ」


「待て!俺も行く!」


「彼女大丈夫なのか?」


「誰が彼女だ!こいつは俺の幼馴染だ

俺も行く」


と言いながらまもりを見てみる

あからさまに呆れた顔をしているまもりに一言


「わりぃ、野暮用が出来た

まもり、また明日な」


「はあ、わかったよ」


まもりを後にして俺は葉月についていく

あとでまもりにはちゃんと謝ろう


「まゆちゃんたちどこにいるんだ?」


「多分駅にいる」


葉月もわざわざ俺を止めてくれていいやつだな

なんて思いながら駅に向かうと

改札の前にまゆちゃんと可奈ちゃんが待っていた


うはー!やっぱまゆちゃん可愛いなー


「さっきぶりだねー」


手を振るまゆちゃんが天使に見える

元気な子だなー

眩しい笑顔で俺を迎えてくれる


「んでー?なんの用?」


可奈ちゃんが葉月に聞いてみる


「ほら、次の休みにみんなでボウリングでも行こうかと思ってさ」


「えーボウリング苦手だなー」


とまゆちゃんが答える

えーーまゆちゃんボウリング苦手なんだ

……ほほーーん


ニヤリっ


「まゆちゃん、俺が教えてあげようか?」


と俺はドヤ顔でまゆちゃんに言う


「えー、涼真君ボウリング出来るの?」


「任せとけ!ボウリングなら指3本でできるよ」


と、渾身のボケをしてみたが


「えー!5本使わないんだー!」


と驚かれた


「お、おう、5本指入れるとこないからね」


まゆちゃんはきっとアホなんだな


「可奈ちゃんは?」


葉月が聞くと


「私も苦手だよ」


と苦い顔をして言う

おっと、これは


「じゃあ可奈ちゃんも俺が教えてあげるよ」


「ほんとにー?」


「おう、ボウリングなら指3本あれば出来るよ」


「普通じゃない?笑」


可奈ちゃんは賢そうだ


「よし、じゃあボウリングに行こう!」


というわけで4人でボウリングに行くことになりました!

話も弾んで日曜日に行くことになった

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