伊那ヒルクライム

 2つ前のエッセイに膝を痛めてしまった事を書いた。

 今年のレースはもう終了でもいいかなって思ったりもしたけど、それだと治そうって気持ちが薄くなりそうだから、10月半ばに行われる県内のローカルなヒルクライム出場を目標にしようと思うって書いていたっけ。


 先生に魔法をかけてもらって、回復に向かいそうに思えたけれど、そう上手くはいかなかった。

 中々痛みが引かなかったので、以前すっごくお世話になった整形外科に行って、レントゲンとMRIを撮ってもらったら、思ったより良くないって言われた。

 左膝の内側半月板損傷。


 だけどさ。だから「あ〜、大変!」って事でもないんだ。

 ま、痛みの原因がここにちゃんとあったって事が分かった。

 半月板が損傷している人って案外沢山いるみたいだ。歳をとってくると特にね。半月板損傷=痛みって事じゃなくて、痛みが無ければ問題にならないけど、それが痛みの原因で、生活に支障が出ていたら、何らかの治療をしていかなければいけないっていう感じ。


 俺のウィークポイントは右膝で、もう何年も前から変形性膝関節症っていうのになっている。

 左脚はその分、頑張ってくれてきたんだけど、両膝が痛いのはかなり不自由だ。ショボン。


 だけど今回、膝を痛めた事で、また色々と学びがあったから、痛みと治療の事についてはまた改めて書きたいと思ってる。

 俺と同じように、膝の痛みとか膝以外でも慢性的な痛みとかに悩んでいる人達がいたら参考になるかもしれないからな。


 この1ヶ月間は、リハビリとか注射とかしながら膝の治療に費やして、トレーニングらしいトレーニングは全然できなかった。

 注射して数日間はかなり調子良くて、大きな負荷をかけなければ自転車にも気持ち良く乗れて。調子悪い時は乗れそうな感じがしないけど、ローラーとか軽く回すのは案外全然問題無かったりして。

 歩くのとか痛いし、むしろ軽く回している時が一番痛みも無くて良い感じ‥‥‥みたいな。


 ずっとそんな感じだったから、レース日に気持ち良く乗れそうな気がしたら、走ろうって思ってた。

 あ、でも、まともにトレーニングは出来なくても、その時の調子を見て、エクササイズとか含めて出来そうな事は地道に最善を尽くしてたんだぜ。念のため言っておくけどさ。


 レース前日も当日も膝はまあまあ調子良かったから、しっかりと自分でマネージメントしてまとめようと思った。

 このコースは9月の初めに一度走っていたから、コースの様子は分かっていたし。



 長野県の伊那いな市が主催する募集定員150名の決して大きな大会ではないけれど、山を登ってるって感じの走りごたえのある11.9km、獲得標高930mのコースだ。


 大会は10月15日。ジャパンカップ観戦の前日にあった。

 ローカル大会らしく、午前9時のスタートに合わせて、スタート地点にボチボチと皆が集まっていく。

 俺は身体を温める程度にアップも強度を上げずにそこそこに行って、スタート地点に向かった。


 ゼッケン順に5人づつ、30秒間隔でスタートしていく。レベルも様々な5人。ま、タイムトライアルみたいな感じだな。

 いつものレースのような緊張感は全然無くて、しっかりマネージメントしながらリラックスして楽しもうと思ってスタート。


 入りは特に慎重に、膝の調子をみながらだ。ダンシングは膝に負担が掛かるから控えめに、でもずっとシッティングだと使ってる筋肉が張ってくるし腰も痛くなってくるから時々短い時間ダンシングを入れる。脚の裏側の筋肉と上半身を上手く使うんだ。リラックスした状態で。それがこの1ヶ月間意識してやってきた走りだ。


 パワーメーターは付けているけど、レース中は全く見なかった。

 無理はしていないけれど、気持ち良く走れている事がすごく嬉しかった。

 9月にこのコースを走った時は、疲れも結構溜まっていたし、峠を1つ越えてきてここを走った事もあってか、すごく勾配がきつく感じていたのだけど、今回はあの時より緩く感じていた。


 トレーニングの時と違って、ホイールも軽い物にしているし、スペアタイヤなども外してバイクは軽い状態にしてある。

 ウェアーもワンピースで空気抵抗も少なく軽量だ。

 そんな事もあるけど、やっぱり何だろう。レースってのは、選手は勿論、関係者の方々のねつみたいなものが詰まっていて、ゴールに向かう空気の流れみたいなのがあるんだろうな。

 俺はそんなものに上手く乗っかって走れていた気がする。


 ゴールはかなり満足感があった。

 しっかりマネージメントできて、痛みも出さずに上手く気持ち良く、それなりに頑張って走れた。

 ストップウォッチのタイムを見て、自分でもびっくりしたぜ。

 こんなに速く走れるつもりは全然なかったんだ。

 1ヶ月間頑張ってトレーニングしてたとしてもこんなもんじゃないかな? って位のタイムで走れていた。


 不思議なんだよな。

 だけど7年前の乗鞍での体験があるから、あの時みたいには驚かない。

 あの時は膝の手術後1ヶ月で、それこそゆっくりとしか走れないって思っていたのに、ちゃんとレースペースで走っちゃえたから、自分でもたまげた。

 身体がレースの感覚を覚えているのかな。

 練習ではこういう状態の時に絶対こんな風には走れない。


 頑張ってトレーニングしてもしなくても、結果がそんなに変わらないならトレーニングしなくていいじゃんって思っちゃうけど、でもそういう事ではないって感じる。

 走れない日々が続くと、こんな風に走れる事が本当に幸せだって思うんだ。喜びが力になる事は確かだ。



 頂上にはテラスがあって、遠くに見える山々とそこに架かる雲が美しい。

 自分の足で上ってくると余計に美しく見える。そこで参加者全員で集合写真も撮ってもらった。


 そこでは、すっごく具沢山の豚汁と小さなカップに入ったカレーが振る舞われて、地元の方達のこうしたが身に沁みた。


 全員が下り切った所では、また豚汁を頂いて、満足満足。

 全員がバーって表彰されて、地産品の商品を頂いたんだ。全員表彰されるなんてイカしてる。順位がいいほど高価な物を頂ける感じ。

 俺はこってり美味そ〜うな大きなにんじんジュースをゲット!

 地元のプロバレーボールチームの選手とサポーターが育てた人参で作ったジュースだって。ぐー!

 伊那市は有機栽培の野菜作りにすごく力を入れているらしいんだ。


 全員が商品を貰えるだけじゃなくて、参加賞までイカしてる。

 立派なリンゴ3個に寒天水の缶ジュース、記念Tシャツとクリアーファイルに入った協賛店の割引き券。

 レースの参加費が安い上に、こんなに頂いちゃっていいのかよ?


 俺は女子1位っていうのも表彰されて、の製品詰め合わせまで頂いてしまった。寒天を使ったドレッシングとかポタージュとか手作り水饅頭の素とか色々入ってた。これは嬉しい。かんてんぱぱの本社がここ、伊那市にあるそうなんだ。


 別に伊那市の宣伝してるわけじゃないぜ。

 そんな魅力たっぷりのアットホームな大会だったんだ。

 走れて良かったぜ〜!


 今シーズンのレースは終了。

 来シーズンに向けて、膝の治療もしっかりやっていくぜ!








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る