八節 「ネトラス行のバイク」

「先輩、来てください。渡したいものがあるので」

席を立った久崎に合わせ俺も席を立ち後を追った。


久崎の家のガレージに案内された。

「これをゼロと言う男から預かってたんです。ネラトスや他の大陸での移動で大いに役に立つと思いますよ」

そう言われ渡されたのは腕輪だった。

「先輩ならそれの使い方、言わなくてもわかりますよね?」

「ああ、わかるよ。というか。」

腕輪に対して粒子を流し腕輪から物質生成粒子を放出させる。すると俺の目にバイクが生成された。

「このバイク・・・」

「あの時の状態のままですよ。だって、鏡夜先輩が最後に乗ってから誰も乗って無いですから」

80年前のとの戦闘の時に使って以降、使わなかったものだ。

「持ってても、結局、粒子加速で移動してたもんな」

「けど、今は持っててもいいと思いますよ?だって今の先輩は粒子加速がそこまでうまく使えませんでしょうし」

「うるせぇ、街中を走行するならこれの方がいいんだよ」

そういってまたがり軽くバイクに触る。どこにでもある平凡なバイクとそこまで性能は変わらない。と言っても俺がバイクのことに詳しくない為、どの辺が平凡なのかもわからないが・・・

「今の鏡夜先輩なら難なく扱えると思います。けど一様テストだけして行ってくれますか?私が不安なので」

「まぁ、久々に乗るもんな、そうさせていただくよ」

そう答えると久崎はガレージのシャッターを開けた。俺はバイクに乗りエンジンをかける。軽く前に進み外に出て久崎の家の周りを一周する。

「問題なく扱えてそうで安心ですね。これで送り出せます」

俺はバイクから降りて腕輪に収納したのだ。すると久崎はガレージにあったバックを俺に渡してきた。

「これから必要になりそうなものを私視点でですがまとめてみました。よかったら中身を確認して下さい」

そういわれて中身を空けると、傷口に塗る傷薬や痛み止めや数日分の飲食が入っていた。

「これは助かるな。ありがとうな久崎。色々してくれて」

「大丈夫ですよ、憧れの先輩を助けることが出来ましたから!」


数時間後

あれから、黒崎涼也についての資料を確認していた。


暗黒剣 月夜


闇属性の武具。白銀の剣の対となる武具になる。

物質操作特化の白銀の剣に対して生物干渉特化の暗黒剣 月夜。


どうやらこの性質がすごく厄介で攻めてきていた機械化魔獣には生物脳を移植していた為、暗黒剣で操られていたらしい。

「その為、最悪守護龍が操れられる可能性があるということです」

「なるほど・・・情報ありがとうな。これで俺も安心して戦闘できる」

「先輩。白野先輩に再会したらよろしく言っておいて下さい」

「白野・・・?俺の友達か・・・?」

「はい、貴方の戦友ライバルの一人で白銀の剣の使い手です。それと必ず、ネトラスの桜の木へ向かってください。そこに鏡夜先輩の刀の性能をフルに出すものが置いてあるとゼロが言っていたので」

「ゼロ・・・またあの男か・・・わかった行ってみるよ。ありがとうな、久崎!」

「はい、行ってらっしゃい。私の憧れの鏡夜先輩!」

その後、彼女は笑顔で見送ってくれた。


ある程度、バイクで進み続けていると道を歩く人を発見した。減速し話しかけることにした。

「旅の方ですか?」

そう話しかけて振り向いた人は見覚えのある人だった。

「キョウヤさん!?お久しぶりです!僕です、イズミです!」

「イズミ・・・?あぁ、久しぶりだな」

「え、その反応絶対忘れてません?」

素直に忘れていたなんては言えないから目をそらした。そこからはバイクを腕輪に収納して雑談しながら移動していた。


「貴様ら、そこで止まれ」

突然そう言われて振り返ると、武装して人達が俺たちを囲んでいたのだった。

「そこのお前、粒子展開して武装したら発砲する。そして隣のお前、腰の銃を構えたら発砲する」

構えていたが無駄だと分かったから素直に手を挙げて抵抗をやめる意思を示した。俺がその意思を示すとイズミも同じように手を挙げた。

「貴様ら何者だ?何が目的だ?」

「イズミって観光目的?」

「はい、観光目的で来ましたね」

「会話をするな、発砲するぞ。貴様、名乗れ」

「鏡夜だ。目的は岩神とこの国にある桜の木だ」

「キョウヤ・・・?まさか、十六夜鏡夜か・・・?」

無意識に抜刀して俺の名を口にした男の首元に刀を突き出していた。

「貴様!動くな!」

次々に俺に銃口が向けれるがその構えを変えずに口を開く。

「その名をどこで知った?なぜ、を知っている?」

今の世界は苗字を持つものが珍しい。神々が統治する世界になってから苗字を持つものが少なくなってしまった。神々ぐらいだろう、しっかりとした苗字を持っているものは。その為、俺は苗字を名乗ることをしなかった。苗字を持っていることが不思議がられるからだ。だからこそおかしいのだ、俺の苗字は名乗ったことがないのに知られていることが。

「待て、落ち着け・・・私は聞いただけだ・・・」

「誰に聞いた?その返答次第ではこの場にいる全員を殺す」

「ゼロと名乗る男だ」


to be continued…

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