六節「鏡夜の記憶」

風が吹いていた。心地よく温かな風だ。まるで人を包み込むように・・・

目を覚ますと、見知らぬ天井があったのだ。

「ここは・・・?」

点滴が自分に打たれているのに気がついた。

「病院なのか・・・この時代にも病院があったんだな・・・」

そんなことを考えていると病室のドアが開いた。看護師が入ってきて俺が目を覚ましているこのに気がつき

「先生!キョウヤさんが!目覚めました!」

そうして廊下へと走っていったのだ。


数分後、先生と呼ばれている医者が入ってきた。白衣で入ってきた為、どの時代の医者もそんな恰好なんだなと思ってしまった。

「自分の名前、言えますか?」

「鏡夜です」

「キョウヤ君。君のことは風神様から来ているよ。合ってるようでよかった」

看護師が手に持っていたバインダーを医者に渡して様々な質問をしてきたのだ。気絶前に何をしていたとか、食欲があるかないかとか、現在の気分とか、そんなことを聞かれて診察ってこんなのなのかな?って思ってしまった。質問攻めをされて約1時間が経過すると時計の針が12時を指していた。時計を見た医者は

「すまないね、自己紹介もしていないのに質問攻めをしてしまって」

「かまいませんよ、診察も仕事でしょ?」

そう言いながら寝ていた体を起こした。

「はは、そうですね、でも、これから関わりますから自己紹介くらいはしないとですね」

そういって病室のベットのついてある机にバインダーを置き、かけていたメガネを少し上げた。

「初めまして、キョウヤさん。私はゼノン。医師のゼノンと申します」

そういって彼は手を差し出してきたのでその手を俺は握った。軽く握手をするとお互い手が離れたのだ。しばらくして病室のドアがノックされてゼノンがそのドアをスライドさせた。

「ふ、風神様!?」

そう呼ばれて入ったのは久崎くざきマイ。ロウラスの神、風神だ。

「鏡夜先輩。お久しぶりです」

彼女は俺に対して深々と頭を下げたことにゼノンさんが驚いたのだ。

「もしかして、君、物凄く偉い方なのかい・・・?」

「いや、気にしなくていいですよ。俺と久崎が古い友人だっただけで・・・」

「そ、そういうことは早く言ってくださいよ!」

ゼノンさんが小声で話しかけてこちらも小声で答える。

「えっと、貴方は・・・?」

ゼノンのことを見て誰ですか状態になっていた。

「俺の担当医のゼノンさんだ。診察していたからここにいるのは当たり前だ」

「なるほど、鏡夜先輩のことをよろしくお願いします」

また、頭を下げる久崎に対して

「あ、頭を上げてください、風神様!」

神様に頭を下げられたら誰でも困ると思う。俺は旧友が神様ってこともあり特に何も思うことはなかったが・・・

「少しだけ、彼と話してもいいですか?診察が残っているのなら席を外しますが・・・」

「い、いえ、大丈夫です!先ほど終わったので失礼します!」

急ぎ足でゼノンさんが部屋から出て行ったのだ。


「早速ですが、本題に入ってもいいですか?」

俺の横にある椅子に腰を掛けて、ポニーテールにしている髪を揺らしていた。

「いいよ、俺もいくつか聞きたいことがあるし・・・」

「では、鏡夜先輩。私についての記憶はどれだけありますか?」

「久崎マイ・・・前世・・・?で正しいのかわからないが、魔法科都立魔剣士学校の第二学年最強の鎌使いだったよな・・・」

その言葉を聞いて安心したようにため息をついて「よかった・・・記憶が戻ったんですね・・・」とつぶやいていた。

「それでは、次の質問、鏡夜先輩自身の記憶はどうなんですか・・・?」

そういわれどう答えたらいいのか悩んでしまった。おそらく、どこまで記憶が戻ったいるのかを聞きたいのだろう・・・

「家族がいたことは、憶えている・・・名前も・・・憶えている・・・・」

名前は父の十六夜龍治いざよいりゅうじと母の十六夜百合いざよいゆりだ。

「なら、彼の事は・・・?」

「ん?彼・・・?誰のことだ・・・?」

「その様子だと、忘れてるようですね・・・」

そういうと彼女は決心したような表情で肩にかけていたカバンからある資料を取り出し俺に渡してきた。

「これは、鏡夜先輩の因縁の相手になると思います・・・」

そして、その資料を確認しているとこののことを思い出したのだ。黒崎涼也くろざきりょうや。友を操り俺に殺させた男で俺を殺した張本人だ。

「なんで久崎がこの資料を?」

声を震わせながら聞いた。

と名乗る男がこの資料を先輩に渡せと・・・」

「そうだったのか・・・」

そしてしばらくの沈黙が続いた。


to be continued…

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