あなたは私の愛を拒むのね 前編

恋人ができた。

女だけど。


私は今まで恋愛に微塵も興味がなかった。

だって私には恋愛になり替わるものがあったからだ。

そう、バレーボールだ。

私は小学2年生からバレーを習い始めた。

最初は親に進められてやってきたクラブチームだったのでそこまで乗り気じゃなかった。

でもバレーをやっていくうちにバレーの魅力に気づきどんどん上達させていった。

今では私の生きる糧はバレーボールって程にまでハマっている。


でも、親はそのことをあまりよく思っていないらしい。

私の家は普通だと思う。

普通が何かすら分からないが。

だからバレーボールにばっかハマっている私を心配していたのかもしれない。


「乃々羽、バレーボール以外もみたほうがいいんじゃないの?」


小6の三学期、突然夕飯中に親が言っていたのだ。


「私は乃々羽がバレーボールをやるのはいいと思うわ。」

「でも、バレーボール以外もみたほうがいいんじゃない?」

「勉強とか、ピアノとか、、、」

「恋愛とか?」


恋愛。

私には無縁のものだと思っていた。

男子が好きだと言われてるロングヘアじゃなし、身長も男子より高い。

女子力なんてない。

ずっとバレーしか見てなかったから。

そんなものバレーになり替わると思っていなかったから。


でもバレーを習わせてくれたのは親で、私のはいっているクラブは強豪チームなので高い。

家は裕福と言えるような家庭ではなかったから親に感謝していたのだ。

だから母の悲しそうな顔は見たくなかった。

なので私は親の期待に応えたかったのだ。


「、、、分かった。」

「ちゃんと勉強する。」

「ピアノは無理かな、、、、。指太いし。」

「恋愛もちょっと、、、考えてみる。」


曖昧な返事でも母は少し喜んだ顔を浮かべる。

この顔が見られるなら私は勉強も恋愛を考えてもいいかもしれない。


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小学校を卒業した後、中学でバレー部に入った。

部活内でもクラブチームでも活躍できてやっぱりバレーは楽しいと感じた。

だから勉強は頑張った。

定期テストでは50番内に入るほどには勉強ができるようになった。

でも、恋愛だけは無理だった。

そりゃそうだろう。

「恋愛しよう!」って恋愛は始めるものじゃないし。

好きだと思って恋愛を始めるものだろう。

始めるってのもおかしいけど。


悩みはあれど毎日充実した生活を送っていた。

転機が来たのは中学2年生になってからだった。


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「毒頼 さざんかです。よろしくお願いします。」


バレー部に新しく入ってきた1年生。

かなり珍しい名前だ。

すぐ記憶に残りそう。


かなり痩せ体系だ。

本当に毎日三食食べているのだろうか。

ポニーテールにかなりふわふわとした髪質だ。

私はショートカットの外はねヘアだから憧れる。


まじまじと見つめていたら目が合ってしまった。

人のことをよく見るのは失礼な気がする。

慌てて軽く頭を下げるが彼女はにこにこと笑って手を振って去ってしまった。

なんだか異国の人のようだった。


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体型から分かる通りさざんかはそこまで上手ではなかった。

でも下手すぎるというわけではない。

そこそこといったところだろうか。


でもさざんかなりの魅力はある。

愛嬌があり、誰にだって好かれている。

人間関係が面倒くさいバレー部の中、誰にだって好かれるような人間性があった。

きつい性格の女子、根暗なドジっ子女子、不思議ちゃん女子、すべてに好かれていた。

周りにはいつも人がいてニコニコ笑っている。

1年は15人もいるのにその中で彼女を嫌う人はいない。

正に天使、いや女神のような存在だ。



私はあまりコミュ力がない。

特定の友達はいるがあまり交友関係が広くなく部活内でも友達と言える人は2人しかいない。

なので人間関係の面でうまくやれている彼女には憧れていた。


そして彼女は先輩にも好かれていた。

厳しい先輩ばっかりなのに彼女はちょこちょこと歩いて行って平然と横に立てるのだ。

難ありな先輩ばっかなのに。

なので彼女は私にも話しかけてきた。

というか、友達と話しているときに一緒に話したのだ。


「乃々羽先輩は、彼氏いますか?」


何故か恋バナになったときに彼女は聞いてきた。

私が一番悩んでいることだ。

みんな好きな内容なのに私だけがのれなくて恥ずかしかった。


「いっ、いないよ?」


咄嗟に答えたためかなり不自然な動作だったと思う。

でも彼女は可愛く笑みを浮かべ


「先輩、可愛いのにもったいないですよ。」

「私が男だったら絶対好きになってますよ。」


さざんかは社交辞令のような受け答えをした。

でもなぜだろうか。

ただの社交辞令じゃない気がして、すこし寒気がした。

きっと気のせいだろう。


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「乃々羽先輩、上手です!」


なぜだろう。


「先私も乃々羽先輩みたいにバレー上手くなりたいです!」


なぜだろう。


「バレーを続けられるのは乃々羽先輩が気配り上手なおかげです。」


なぜだろう。


「乃々羽先輩の教え方とってもわかりやすいです!」


なぜだろう。


「乃々羽先輩、ありがとうございます。」


なぜだろう。


どうしてこんなに彼女に褒められてドキドキするのだろう。

心臓がバクバクしてさざんかを見ると嬉しくなる。

普通だったら褒められただけでドキドキするわけじゃないのに。


「乃々羽先輩?どうしたんですか?」


はっ!

ついさざんかがいる間に考え事をしていた。


「ううん!なんでもないよ!」


なんだかもどかしくて高い声で話してしまう。


「そうですか。ならよかったですが、、、。」


敬語、先輩、目上。

この壁を乗り越えたい。

彼女とは対等でありたい。

ずっと一緒にいたい。


こんな考えを持ったのはさざんかが初めてだった。


きっとこれは『恋』だ。

そう意識した瞬間目の前が真っ赤になった。

くらくらする。

ずきずきする。

これって恋じゃないよね、、?

あれ、、急に眠たくなってきて、、、、


『乃々羽先輩!だいじょう、、、』


最後に聞こえたのはさざんかの声だった。


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気が付いたら保健室のベッドに横たわっていた。

嗅ぎなれないエタノールの匂いが鼻につく。

ぼそぼそと小さな含みがある声がする。

ぶつぶつと呟いているので今起きたら気まずい。

反対方向へ向き狸寝入りをした。

声の主はつかつかと私に歩き寄ってくる。


「先輩。」


耳元に近寄って小声で話してきた。

うすうすこの声の主は気づいていたがさざんかだ。

ねたふりをしているので声を抑えて話を聞く。


「私、先輩のこと好きですよ。」

「先輩、大好きです。」


「、、、、ふぇ!?」


思わず大きい声をだし、目を開いた私を見てさざんかはクスリと笑い呟いた。


「先輩、その反応はOKってことですよね?」


もしかして、さざんかじゃないのかも知れない。

そう思うほどに色っぽいさざんかに胸がどぎまぎする。


何か反応をしなくてはならないと早口に返事をする。


「OKです、、、。」


私の初心な反応が面白かったのかさざんかは声に出して笑った。

こんなに人間味が出たさざんかは初めて見た。


可愛い反応に私も思わず笑みがあふれた。



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キャラの名前です。

読みにくい子ばっかなので書きました。


毒頼(どくせ) さざんか


水谷(みずたに)乃々羽(ののは)






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