「こんなお転婆娘で本当にいいのか?」


「良かったわ。これも私の本当の婚約者様のおかげですわよ」

「ああ、感謝している。それでこの者の今後だが……我が国の者の名を騙り、その者の婚約者である隣国の皇女に繰り返した侮辱と暴行。万死に値するのだが、国王陛下の考えは違うようだ」

「あら? そういえば妹だと仰る方はどうなさったの?」

「金目の持って逃げていたよ。まあ、高熱を出していたのは事実なんだが……性病に罹っていた」

「じゃあ、ここにいる詐欺師は?」

「検査の結果、感染していることが判明した。国王陛下の希望では『処刑してあっさり殺すより、このまま手厚い看護と新薬の投与で生き長らえさせた方が良いだろう』とのことだ」


言葉を変えると『新人看護師の研修を受けて、新薬の治験になってもらおう』というもの。

それを国王に提案したのは私です。

どうやら快諾していただけたようです。


「帰りましょう、お兄様。国王陛下がお義姉ねえ様のお輿入れを許してくださったでしょう?」

「ああ、この国で悲しみに沈んでいるより、式はまだでも婚約者の近くにいた方が良いと言ってくれた」

「離宮にお入りいただく準備をしなくてはいけませんもの。喪中のため私たちの結婚式に出ていただけませんが、そののちに開く『少し豪華な食事会』には出ていただけますわよね」


そんな話をしながら病室から出ました。

ベッドで全身を包帯で巻かれて動けない

彼はすがるように私を見返していました。

それに微笑んで、扉を閉めさせていただきました。


最後まで気付かなかったのかしら。

ええ、コレはなのです。

不自然ではありませんでしたか?

あなたを取り押さえた方々。

だって、暴れるあなたを取り押さえたにもかかわらず、足が当たった程度で手の力をゆるめたのです。

あれは馬車が近付いてきたから……まさかそれに乗っていたのがお兄様だとは思いませんでしたわ。

ですが、それが『あなたの罪を暴かずに重い罰を与えられる』口実になりました。


それに、なぜ侍女がいつもそばに居なかったのだと思いますか?

あなたに犯行を実行させるためです。

私はお兄様の婚約者を慰めるためにこの国に来て、この国に滞在したのです。

なぜ、貴族の悲しみを癒すパーティーにでた私に言いよって、無理矢理婚約ができたと思ったのでしょうか。

答えは簡単です。

私ので提出していたからです。

国を変わったときに爵位を返上し貴族籍を抜いたとはいえ元貴族。

義務はありませんが独身だと思われてがくるのです。


この国の貴族だった婚約者様にも何度か婚約のお伺いが届いていました。

ですが学園で私たちは出会い、婚約式もしました。

そして『婚約したのですからめてくださいね』とやんわりお断りするために婚約証明書を提出したのです。

ですから、男が提出した婚約届を貴族院は勘違いされて受理したようです。


私は彼が無爵でも良かったのです。

父である皇帝は「将来有望な若者とえにしを結んでくれた」と私を誉めてくださいました。

その裏で婚約者様に「こんなお転婆娘で本当にいいのか?」と聞いていたことも知っています。

ですが婚約者様は仰ってくださったのです。


「私は一人の女性に恋をしました。その方が皇女様だっただけです。そして私と結婚して皇女様から『私だけの奥様』に肩書きが代わります。皇帝陛下はいかがですか? 私みたいな平民を皇女様の婿になることを納得なされていますか?」


私はこの言葉だけで十分です。

ちなみにその後も会話は続きました。


「あの娘を嫁に引き取ってくれる有望な男を早く『息子』と呼ばせてくれ」

「皇帝陛下、私はただの娘婿ですよ」

「構わぬ、構わぬ。娘は母親といつも仲良く植物の研究をしているのだ。というわけで男同士、有意義な時間を語ろうではないか。それで魔導具なんだが、こういう機能が……」


二人の関係も良好なようです。

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