第23話 恋人ごっこ

ある日の事、学校終わり、バイト先に行こうと教室を出ようとした時だった。



「優奈」



グイッと腕を掴まれた。



「きゃあっ!ゆ、雪渡っ!な、何!?」

「ちょっと、お願いがあるんだ」

「えっ?」

「ちょっと、付き合って欲しい!」

「付き合ってって…バイトあるし!」

「バイト先まで、一緒に行こうぜ」


「やだ!恋人じゃあるまいし」


「そうなんだけど、協力して欲しい。行きながら事情説明するから頼む!頼める奴、お前しかいないんだ」



「雪渡?」



私は雪渡とバイト先に行く事にしたんだけど……


雪渡の話だと、どうやら最近、雪渡に想いを寄せる子から告白され、


付き合っている彼女がいると伝えてしまったらしく、


一緒にいる所を見た事ないと言われてしまい、


その彼女に証明する為、彼女役になって欲しいと言われたのだ。


変な事に巻き込まれ良い迷惑だ。




「…私に彼女の恋愛シュミレーションをしろ!と?絶対ボロが出るよ!大体、どうしてそういう嘘つくかな?」



「仕方ねーだろ?」

「仕方なくない!私に務まるわけないし」


「良いんじゃね?恋愛ごっこ。もしかすると恋愛したくなるかもしれねーじゃん!逆に俺達の間に本当の恋愛が生まれたりして」



「ない!」


「否定した所で、絶対ってわけなくね?」




「………………」





恋愛絡みは一番タチが悪い。


ただでさえ成巳ちゃんの件で嫌な事あったのに、


本当最悪だ……





「何かあったら全責任取ってよね!!」


「いいぜ!俺がまいた種だし」




「………………」




ある日のバイト終了後――――




「あの!」

「はい」


「あなたは本当に雪渡君の彼女ですか?」

「えっ?」


「あなたから雪渡君に対する愛情が全く見えてこないんですけど!」


「私、感情を余り出さないから」

「えっ?」

「それじゃ」




私は足早に、そこから去った。



「………………」



「…雨…ついてない…」



私は足早に帰る途中――――




ドンッと誰かとぶつかり地面に転ぶ。



「…っ!」


「何処見て歩いてんだよ!」

「す、すみません…」



私はゆっくり立ち上がる。



グイッと腕を掴まれた。



「な、何ですか?」

「君、可愛い顔してんじゃん!ちょっと付き合ってよ」

「や、やだ!」



ドンッと押しのけ走り去った。 



「…今日は災難続き…本当…ついてない…」



その直後、私の携帯に着信が入る。




「もしもし」


足を止め、電話に出る。



「優奈?俺だけど、お前、もう帰った?」

「…えっ?あ…うん…」

「嘘ばっか」

「えっ…?」




フワリと背後から抱きしめられた。



《えっ…?誰…?》



私の視界に入って来たのは―――



ドキン…



「えっ?ゆ、雪渡??」



まだ、バイト中のはずの雪渡が何故か私の傍にいる。



「…どうして?」


「オーナーが、お前の様子おかしかったからと言われて、帰れって」



「……………」



「そうしたら…お前…まさかの災難続き…」




向き合う私達。


そして、私の手を掴み歩き出した。



「雪渡!!ちょ、ちょっと!何処…」

「俺ん家」

「えっ?どうして?私家に帰るし」

「黙って付き合え!」




私は雪渡の家に始めて行く。 



初めてあがる男の子の家。


私の胸はドキドキ加速する。


バスタオルを持ってくる雪渡。



「ほら」

「ありがとう」



私は拭き始める。



「遅っ!」

「えっ?」

「貸せよ!」



髪を結っていたゴムを外すされ、ワシャワシャと私を動物扱いするかのようにバスタオルで拭かれる。



「わっ!」


「さっさと吹かねーと、風邪引くだろ!」


「だ、だからって…もっと優しくしてくれても……」



「……やだ!……」


「なっ…!」



クスクス笑う雪渡。



「ほら、先にシャワー浴びて来な。洋服出しておくから」



脱衣場を案内され、私はシャワーを浴びる。


そして、入れ替わりで雪渡が脱衣場に行く。



雪渡には部屋にいるように言われ私は待機していた。




《落ち着かない》



少しして戻ってくる雪渡。


そして、私の隣に腰を降ろす。




ドキン



「後で、令ニさん迎えに来るから」

「う、うん…」

「なあ、それより、さっき彼女から何か言われてなかったか?」

「えっ?…大丈夫だよ」



「………………」



雪渡に見つめられる視線に私の胸がドキドキ加速する。




「ほ、本当に…大丈…夫…」




ドキン


言い終える前に私の片頬に触れる雪渡。



ドキン  



「お前、素直じゃねーな」

「えっ?」


「オーナーから違う目線から見てみろって言われて…色々発見あるな~って…」


「雪渡…」



微かに微笑む雪渡。


ドキン


スッと、触れていた頬から手が離れる。



《…いつもの雪渡じゃない?》

《気のせいかな?》



「優奈、お前すっげー緊張してるだろ?」 

「えっ!?」

「無理もねーか…」

「…それは…」



キスされた。


ドキン


かあぁぁぁぁっ!

顔が一気に赤くなった。


不意のキスは反則だ。



《いつも言い合っているけど…》

《こんな事、二人きりの時されたら…》

《意識しちゃうじゃん…!!》



「…悪い…」

「…ううん…」



「………………」



お互い目をそらし、沈黙が流れる。



「…なあ…お前に1つ確認したいんたけど」

「何…?」



私は振り向かず返事する。



「前に襲われた時って……ヤられたの?」

「…えっ…?」


雪渡を見る。


視線がぶつかる私達。



「…俺…お前を助ける事が出来なかった日、正直、すっげー…気になってんだけど…」


「…それは……内緒♪」


「えっ?」


「ご想像にお任せします♪」


「何だよ?それ!だったら押し倒して確認するぞ!」


「うわ!最低!!力づくで、そんな事…」 



グイッ ドサッ



雪渡は、押し倒し股がった。



ドキッ

両手を押さえつける雪渡。




「ちょ、ちょっと…!雪渡…」



スッと離れ、私を引っ張り起こすと抱きしめた。



ドキン



「するわけねーだろ?お前を傷付ける為に、恋人ごっこしてんじゃねーし。あくまでもあっちが納得しねー限り…しばらくは続けなきゃなんねーだろ?」



「本当…キスするわ、押し倒すわ。あんたに、そのうち全て奪われそうだよ。まあ…ファーストキスは既に悪い奪われ方だったけど……もっとロマンチックにしたかった…借金抱えて人生狂いまくりだよ」



「疫病神だからな」

「そう…だよね……雪渡どうにかして!」

「知るか!」


「後、彼女、聞いてきたよ。本当に彼女なんですか?って…」


「やっぱり?」


「雪渡に対する愛情が見えないって。感情出さないからって言っておいたけど」




「………………」



「じゃあ、イチャイチャしとく?マジ付き合っている感出しておくか?」


「えっ…?いやいや…心臓持たないから!」



クスクス笑う雪渡。



「だけど…もし…もしだよ。このままの流れで雪渡の事……マジ(本気)になったら…考えてくれる?」


「えっ?」


「…ごめん…いや…正直、分かんないけど…何かしらの自分の気持ちが雪渡への思いに気付いた時…私の事…考えてくれる?」


「…優奈…」


「…なーんて…私、公私混同したくないって思って言っていたのにね…ごめん…気にしな…い…で…」




私の頰に触れキスをした。


ドキン



「別に、お前が、それで恋愛する気になったら考えてやるよ。正直、俺も良く分かんねーし。今は無理言って恋人ごっこさせてんだし、恋愛感情か生まれるわけない!なんて断言できねーからな」



「…雪渡…」




そして、雪渡の携帯に令ニさんから連絡が入り私は帰ることにした。

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