第17話 帝国皇子視点1 諦めていた俺のエルが婚約破棄されました
俺は帝国の第五皇子だ。
帝国にいると色々と周りが煩いので、よくハインツェルに嫁に行った叔母のところに行かされていた。
しかし、叔母の子供たちは凄かった。俺は帝国の皇子だから剣も魔術もそこそこ出来るのだが、兄のエックは剣の天才、姉のクラウは魔術の天才だった。まあこの二人共、俺より年上だから俺よりも出来て当然なのだが、それにしても違いすぎた。
俺はこの二人の前で自尊心を叩き折られ続けた。一緒にいると本当に俺が出来ない子になってしまう。
でも、俺は唯一、その二人の妹エルにだけは勝てた。
2つも下の子に勝てて何が嬉しいだ!・・・・。でも、エルが出来なくて悔しがる様はとても可愛かった。
こいつは本当にドジで、よく木の根や段差に引っかかって転けていた。手がかかるのだ。
上の二人といると落ち込むので、俺はエルとつるんていることが多くなった。
エルの前だと俺は出来る子供になって、また、エルが俺が出来るのを見てとても喜んでくれるのだ。
「エルもしたい」
と言うので色々教えるのだが、エルは全然出来ない。
「うーむ」
そう言って悔しがったりへそを曲げたりするのもとても可愛かった。
俺は、エルと過ごすのがとても楽しかったのだ。
それが砕け散ったのは俺が8歳になった時だ。俺はエルに婚約者がいるのを初めて知ったのだ。
ガーン。
8歳の俺は頭を殴られたように動けなくなっていた。
そう、俺は知らぬ間にエルが好きになっていたのだ。
何でもオーバードルフ王国の王太子と生まれた時から婚約していたらしい。
そんなの何も知らなかった。
恋を知った瞬間が失恋した瞬間だったのだ。
俺様はショックのあまり帰国して1年間はこの地に足を運ばなかった。
ただひたすら剣技と魔術に精を出したのだ。
離れればエルのことが忘れられるかと思ったが、無理だった。
何故かいつも、エルの困ったような顔を思い出してしまうのだ。
そこへエルがゲフマンに襲われたと聞いたのだ。俺は取りも直さず、ハインツェルの地に飛んだ。
でも、そこでは5体満足でお菓子を食べてごきげんになっているエルがいた。
聞くところによるとエルは無意識のうちに雷でゲフマンの大軍を殲滅したらしい。
えっ、こいつも、兄姉の血を継いでいるんだ。宝剣を抜けたことと言い、雷でゲフマンの大軍を殲滅したことといい、只者ではなかった。
でも、そのお菓子を食べる笑顔がとても可愛かった。
でも、いずれは他の男のものになるのだ。俺はそいつをギッタンギッタンにしてやりたかった。
1年ぶりにあったエルは更に可愛くなっていた。
そして、強くなっていた。
兄とか姉に出来損ないと言われても軽く流せるようになっていた。
まあ、別な所で厄災姫と言われていたが・・・・。
俺は帝国の皇子なのに、本当に欲しい物が手に入らないなんて・・・・。
俺はその思いを逸らすために、剣に魔術に勉学に死にもの狂いで頑張った。
エルが、王立学園に行くという時は男どもの中にエルが入るなんて許せなくて俺も行くと駄々をこねた。
でも、許されなかった。
それでも、俺は何回か無理やり機会を見つけてオーバードルフの学園に顔を出した。
エルは元気そうにしていたが、何故か友だちも出来ていないみたいだった。
エルの相手の王太子はこれで本当に王太子が務まるのかというくらいのボンクラだった。
女と遊ぶことには長けているみたいだったが。
こんなので良いのかと散々エルに言ったが、
「フェルは煩い!」
と俺が却って嫌われてしまった。
口うるさい兄になってしまったらしい・・・・
俺がなりたいのは兄ではなくて恋人なのに・・・・
そのエルが婚約破棄されたと聞いた時には驚いた。
でも、あの王太子ならやりかねない。
それもよりにもよってゲフマンの手先の陰謀によって嵌められたと・・・・。
俺は心配で心配で慌てて、ハインツェルに向かった。
そこには元気なエルを見てほっとした。
エルにいきなり抱きつかなかったのは褒めてやりたい。
もう絶対にエルは誰にも渡さない。
俺は早速本国に俺の婚約者として申し込むように指示を飛ばした。
これに反対するやつはたとえ皇帝だろうと許さない。どんな事があっても通すように厳命してある。
そして、この地ではまず、将を射んと欲すれば先ず馬を射よだ。
俺はエルの兄と姉から精力的に交渉しだした。
でも、エルのお姉様には
「あんた、まず、エルに好いてもらえる努力しないとダメなんじゃない」
と言われる始末だ。
うーん、エルには兄ポジションにいるのかもしれない。それは良くない。
外から見ても半独立国のハインツェルの姫は人気があるのだ。
剣聖の兄と大魔術師の姉と義兄弟になれるし、ハインツェルは戦力的にもとても強いのだ。
しかし、そう言う命知らずは俺の剣で成敗してやる。
俺はエルとの仲を邪魔するやつに対してはやる気満々だった。
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