第15話 南国国王視点2 楽勝のはずが大打撃を食らいました
俺様は機嫌が良かった。
初めてハインツェルを降伏させられるのだ。
先祖代々散々苦渋を味わされてきたハインツェルを降伏させる。これほど嬉しいことはなかった。
これで歴代の王の中でも最強の王となることが決定するだろう。
俺様は早速、敵要塞を包囲して、その上で軍使を派遣しようと考えていた。
しかし、包囲しようとして向かった我が軍勢がいきなり攻撃を受けたのだ。
「も、申し上げます。包囲に向かった我が先陣が破壊の魔女によって殲滅されました」
「な、何だと、攻撃されたら軍使を出せと命じていただろうが」
「軍使は白旗を上げて軍使になろうとしたものの、全く無視されてあえなく殲滅されたとの事です」
「きゃ、彼奴らには国際常識がないのか」
俺様は切れていた。
さすがハインツェルの脳筋。軍使の意味を知らないらしい。
「ええい、脳筋には包囲してからゆっくりなどという微睡こしいことは、無駄だ。直ちに1騎軍使を選抜して、向かわせろ」
俺様は指示した。本当に常識のない奴らは面倒だ。その時はまだ余裕があったのだ。
しかし、しばらくして、次の報告に俺様はキレた。
一騎出した軍使が城から射抜かられたというではないか。
「奴らは軍使の意味がわかっておらんのか」
俺はわなわなと手を震わせた。
「こうなったら5騎の軍使を出せ。1人くらい射抜かれた所で5人もいれば1人くらい砦にたどり着けるだろう」
「はっ直ちに」
慌てて準備に走る部下を尻目に俺様はふんぞり返っていた。本当にハインツェルの脳筋を相手にする時は疲れる。
その俺様が吹っ飛んだのは、5騎が殲滅させられたと聞いた時だ。
「おのれ! ハインツェルの奴らは軍使というものを知らないのか。無抵抗なものを攻撃するのはそれでも武人か」
俺は立上って叫んでいた。
「はっ、射てきたのはおそらくエックハルトではないかと」
「あの脳筋か。今日はそれを抑える騎士団長らはおらんのか」
「おそらく。それとも、エックハルトが機嫌が悪くて抑えが効かないのかどちらかではないかと」
「どうすればよいのじゃ。このままでは折角の策が、相手に伝えられないではないか」
俺様はとんでもないことを思い描いてしまった。このまま、策を相手に知らせることも出来ぬまま、全滅する未来を。
俺様は慌てて首を振る。
「なんとしてもあの脳筋共に知らせるような方法を思いつけ」
俺様は部下共に無理難題を押し付けた。
「魔術師に空に文字を描かせればどうでしょうか」
一人の部下が申し出てきた。
「よし、それだ。脳筋共が攻撃してくる前に直ちに書かせろ」
「はっ」
俺様の言葉に部下達が慌てて行動に映し出した。
魔術師の主力はオーバードルフの本国に行かせており、こちらは2流しか連れてきていない。だが文字くらいかけるだろう。
苦労して『お前らの妹を預かっている。妹の命が惜しければ攻撃を止めて、降伏しろ』と書かせた。
これでやっと伝わっただろう。
何でこれを伝えるのにこれだけ苦労しないといけないのか
俺様は疲れ切っていた。
しかしだ、次の瞬間その文字がまっ2つに斬られていたのだ。
「えっ!」
次の瞬間、我が本陣に凄まじい衝撃が来た。
斬撃の直撃を受けたのだ。
爆発が起こる。
「何事だ」
「は、城から斬撃の直撃を受けたようです」
本陣は凄まじい惨状になっていた。
「おのれ、奴らは妹の命が惜しくないのか」
俺様は怒り狂った。
「奴らのことですから妹の命などどうなっても良いと思っているのではないですか」
一人の部下が心配そうに聞いてくる。
「いや、それは」
俺は絶句した。
確かにアイゼンフートの策に載っただけなのだ。奴らが妹を溺愛しているかどうかを確かに確認したわけではない。もし、違っていたら・・・・
そう思うと俺様も流石に背筋に寒いものが走った。
『人質になっているのは誰?』
しかし、敵から聞いてきたのだ。
「はっ、一応気にしているじゃないか。エルヴィーラだと言ってやれ」
俺様は指示する。そう、やっと乗ってきてくれた。
しかし、次の文字に俺様は驚いた。
『妹ならここにいるけれど、誰を間違えて捕まえたというの?』
「ええい、埒があかん。俺様を画像で出せ」
魔術師たちに指示を飛ばす。
魔術師達が苦労して俺様を画面に出す。
「嘘を付くな。こちらはオーバードルフの王都で婚約破棄されて傷心のエルヴィーラを拘束したのだ」
俺様は宣言してやった。
「あっはっはっはっ、貴様が蛮族の王か」
エックハルトが大画面に出てきた。これが敵の脳筋の親玉だ。お様の軍が今までこいつにどれだけ酷い目にあわされてきたか。
「誰が蛮族だ。ゲフマン国王、メッテルだ」
俺様は部下の手前ふんぞり返って言ってやった。
「ふんっ、まあ良い。そもそも我が妹はいくら出来損ないだからと言って貴様らごときに捕まるわけはないぞ。10年前を忘れたのか」
「10年前?」
俺様は不吉なことを思い出していた。そう言えばハインツェルには子供は3人しかいなかったのでは。一人がこの脳筋、二人目が破壊の魔女、そうしたら3人目は・・・・・
「貴様らの大軍が妹の馬車を襲って殲滅されただろうが」
「えっ、ひょっとして厄災姫・・・・」
そう、厄災姫しか残っていなかったのだ。子供の一人でも人質にしようという我大軍は、その子に反撃されて全滅で終わってしまったのだ。俺は馬鹿だった。アイゼンフートの策をよく吟味もしなかったのだ。拉致するなど元々絶対に無理だったのだ。
「誰が厄災姫よ」
画面には本人が映し出された。
あのアホのライプニッツはどうしたのだ。
その時だ。早馬が駆け込んでは来た。
「も、申し上げます。オーバードルフにてエルヴィーナを拘束しようとした我らの手のものは、反撃にあって失敗。かろうじて1人動けるものから報告が今王都に入ったと」
「愚か者!そう言う報告はもっと早くしろ」
俺様は呆然とした。
や、やばい。
怒り狂った厄災姫の怒りがこちらに向かったなら
「直ちに全軍退却だ。急げ」
俺様が叫んだ時だ。
「ギャーーーーー」
凄まじい光と衝撃が俺様を襲ったのだ。
俺様はそのまま意識を無くしてしまったのだった・・・・・
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
続きは明朝更新予定です。
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