第6話 厄災姫と呼ばれて
使うなと言われていた能力を、また使ってしまった。
パーティー会場になっていた学園は・・・・ほとんど廃墟になっていた。
アチャーーーー、やってしまった。
勉強した図書館だけは燃えずに建っていたが、無意識に避けさせたのだろうか?
ここにいて、これ以上惨事を続けるわけにも行かない。
私は兵たちが来る前に領地に帰ることにした。
うーん、王太子に婚約破棄されたからって、その相手を雷で焼き鳥、いや焦げ人間にしてしまいました・・・・洒落にもならん。
まあ、治療魔術師もいるし、命は大丈夫だろう。
公の場で約破棄なんてされたから、一応雷撃でその恥辱を晴らしたことになるよね。
お兄様なら「何故その首取ってこなかった!」と言いそうだけど。
お姉さまなら「何でアソコをちょん切って来なかったの」って文句言うかな?
何かとんでもないことやってしまった気がするけど、とりあえず良いだろう。
考えるのは領地に帰ってからにしよう。この場にいたゲフマンの動向も気になるし。
途中、乗馬クラブの厩舎に馬がいたので拝借することにした。
一路馬で、走り出した。
私は小さい時、出来損ないと言われて泣いていた。
いつもいつも、泣き虫の末っ子として。
6つ上のお兄様は危険だからと絶対に私と剣を交えた練習はしてくれなかった。
5つ上のお姉様はそんな私を慰めてくれたが、お姉さまも絶対に魔術を教えてくれようとしなかった。
我が家は、オーバードルフ王国建国の戦神エリザベートが辺境伯として封じられた家だ。
当然、武の一門だ。
お兄様のエックハルトは次期剣聖と言われ、その強さは近隣諸国はもとより大国にさえ鳴り響いている。お姉さまのクラウディアは魔術師としての才を遍く引き継ぎ将来は大魔術士になるだろうと言われていた。
なのに一番下の私は、剣術はからきしダメ。魔術もろくに使えない、出来損ないだった。当然家臣たちも武の一門で、私は心無い一部家臣たちからも見下されていた。
まあ、私は生まれたときから前国王と先代のおじいさまとの間で王孫との婚約が決まっていたから、どの道いなくなるのが判っていたから、そんなに頓着しなくていいと言われていた。
でも、それは子供心に傷ついた。
いつも戦いの時は屋内に閉じ込められてた。でも、我が家は母も魔術師で、ゲフマンの侵攻の時は一家総出で戦闘に出ていた。一家の中で私一人が安全なところで戦えずにもんもんとしていた。何しろお兄様もお姉さまも7歳位の時から戦場にいるのだ。お兄様なんて7歳のときには剣聖に勝ったと言って喜んでいたのだ・・・・・。1歳の私は当然覚えていないけど・・・・。
その時も、ゲフマンの侵攻が近付いており、父母は私を王都にやることにしたのだ。
7歳だった私は、一人だけ王都にやられるのが嫌だと、散々ぐずったのだが、国王のおじいさんが、私を美味しいお菓子と一緒に待っていると言われて仕方無しに、いや喜んで馬車に乗っていた。
王家のお菓子なんてめったに食べられる物ではない。何しろ我が辺境伯は武の一門、飯は食べられれば味は気にしない。当然お菓子なんて殆どない。そんな中でいつも国王のおじさんが持ってきてくれるお菓子は本当に美味しかったのだ。
私は領地を出るのも初めてで見るもの全て新鮮だった。
その私の馬車がゲフマンの目についたのだ。
ゲフマンとしては辺境伯の小娘を人質にとって今後の交渉を優位に進める意図もあったのだろう。
なんと千名もの大軍を極秘裏に北上させたのだ。
こちらも20名の護衛騎士はいたが、1000名もの大軍には物の数ではなかった。
あっという間に護衛は殲滅されて残されたのは護衛隊長と4名の侍女たちだけになってしまった。
馬車は馬を倒れされてひっくり返ってしまった。
「姫様」
私を庇ったビアンカは血まみれでピクリとも動かなかった。
変な笑いをした男たちが私の周りを囲った。
「ビアンカ」
わたしは血まみれのビアンカにすがりついていた。
「もう、もう、許さない」
私はプッツン切れていた。
残された侍女たちに襲いかかろうと厭らしい笑みを浮かべていた兵士に雷の一撃が振り下ろされたのは丁度その時だ。
凄まじい雷雲が周りを包み、ゲフマンの軍勢は成すすべもなく、全て雷に打ち倒されていたのだ。
厄災姫とゲフマンに呼ばれるようになったのはそれからだ。
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