第4話 絶体絶命のピンチを落雷が救ってくれました

我が領地の兵士の発言は皆に衝撃を与えたようだ。


「エルヴィーラ、貴様、何て事を企んだのだ! 私に相手されないからと言って、部下にそのような事をやらせようとするなど、鬼畜以下の振る舞いではないか?」

「何て恐ろしい!エルヴィーラ様はお顔に似ず、何て事をされるのでしょう!」

「エルヴィーラ!何て事なの?そんなことを企むなんて!そんなに私が憎いの?」

皆好きな事を言ってくれる。


白々しい。私を嵌めるために、このようなことを仕組んだのはあんたらでしょうに。


それもゲフマンと組んで。敵国のゲフマンと組むなど、下手したら国家反逆罪に問われるのだけれど、こいつら判っているのだろうか?


この大使も大使だ。私の前に出てくるなんて、どういうつもりだろう?


うちの兄と姉はゲフマンに対して嫌悪感を持っている。というかさんざん戦っているので、見た瞬間剣を抜いている。もし、私が会って、見逃したという事になっては、後で何を言われるか判らない。

特に私を嵌めるために色々算段してくれたとなると尚更だ。これが何もせずに逃げ帰ったと判った日にはどうなることか。さすがの脳天気な私でもその先は考えたくない。


これで何もせずに逃げ出す手段を取るという手は無くなった。


兄なら言うだろう。ゲフマンと組んだ奴は直ちに処刑しろと。


こいつら兄を敵に回す勇気があるのだろうか?


兄は王族だろうが、関係なしにやるだろう。


何しろ建国当時の我が国の事情が事情だからだ。


ひょっとしてこいつら知らないのか?


我が辺境伯家に与えられている特権を?


おそらく知らないのだろう。知っていたら私を虐めることなんて絶対にできなかったはずだから・・・・

私は頭が痛くなった。



そして、この男だ。


どこかで見たことが・・・・


「あああ!思い出した!そいつ犯罪者だ。婦女暴行未遂でお姉さまの怒りを買って宮刑に処される所を逃げ出した」

私が大声をあげた。



証言した男はまさか私がその事を知っているとは思ってもいなかったのだろう。

驚いた顔をしている。


「何を言う、自分が都合が悪くなったからと言ってそのような世迷い言を」

「そうです。私はエルヴィーラ様から確かにアマーリエ様を襲うように指示を受けたのです」

ベルンハルトの言葉に男も必死になって言い募る。この男も必死なのだろう。



「何を言うのですか。王家は犯罪者を庇うのですか?」

ベルンハルトに私はきっとして言った。


「この男はゲフマンに逃亡したのが我軍の調べでついています。それが何故ここにいるのですか。そこのゲフマンの大使が噛んでいると思いますが」

私はゲフマンの大使を睨みつけていった。


「何を言うのだ。大使はこの大事な証人の男を我々に提供してくれたのだ」

「そうよ。私の操を守るために日頃の恨みを越えて協力してもらったのよ」

ベルンハルトとアマーリエが言う。

「ほう、さすが大使ですな」

「いつもの恨みを忘れて協力頂けるとは」

周りの奴らも言う。



そうか、こいつらひょっとしてゲフマンに嵌められたのか。いや、違うだろう。おそらく、ベルンハルトとアマーリエらは私を強いては辺境伯を追い落とすために共同戦線を張ることにしたのだろう。



だから、後ろでのほほんとしている奴らはどうしようもないのだ。こいつら誰のおかげで後方で裕福に暮らしていられるのか理解していないのか。


それは当然私のおかげではない。最前線で戦っている兄や、姉、父そして、多くの兵士たちの犠牲のもとに立っているのだ。


それが判っていないのならば判らせる必要があるだろう。


本来は多少のことは私が我慢さえすればいいと思って見逃していたのだ。


でも、もうこうなったら、どうしようもない。だってここにいる連中の中で兄弟姉妹が兄や姉と親しい奴らも多くいるはずだ。私が黙っていようが、もう絶対にバレる。


それに、敵国と通じた人間を見逃すわけにも行くまい。それと我軍の犯罪者も。元々ゲフマンのスパイか何かだったのだろう。でないと、姉の管轄下で犯罪を起こすなど、狂気の沙汰をする訳はない。我軍の綱紀の厳しさは世界一なのだから。


こうなったらやるしか無い!

私は覚悟を決めた。


「どうだ。出来損ないのエルヴィーラ。観念したか」

王太子は笑って言った。

「私も鬼ではない。貴様の命まで取ろうとは思わない。修道院送りで許してやろう」

王太子はギラついた厭らしい目で私を見た。


私の背筋を怖気が走った。


ふんっ、その途中で御前がごろつき共を雇って私を襲わせるのか


私の中で何かがプッツンキレた。


王太子の後ろから兵士たちが現れた。


王太子の後ろで大使がこれまた厭らしい笑みを浮かべていた。


その時だ。


稲妻が一閃しその大使の頭上から襲いかかったのだ。

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