激戦

 Side ネロ


 戦いは優勢とは言い難い。

 まさか団長クラスと率いる精鋭達と互角に戦える戦力がこの世界にもいるなんてね。

 

 これから幕開けする千年王国に欲しい人材だが、同時に滅ぼさないと幕開けは出来ないだろう。


 それがとても惜しく、悲しい。


 僕は止まるわけには行かないんだ。


 千年王国実現のために。



 Side 安藤 マキ


『貴方だけに構っている暇はない!!』


『そう、それでいい!! 私達は悪なのだから!!』


『それが分かっていながら!!』


 私はウェンディの力を開放する。

 力押しでも構わない。

 

『嵐よ!! 巻き起これ!!』


 自分を周辺に風の魔力が吹き荒れる。

 それをモロに浴びるアイナのパワーローダー。


『まだよ!!  まだ負けてはいないわ!!』


『ッ!!』


 機体がボロボロになりながらも猛スピードで吶喊してくるアイナ。

 私は擦れ違いざまに剣を振りぬいた。


『お見事――』


 私は振り返らずに前に進む。



 Side 木里 翔太郎


 俺はサエと二人掛かりでレオスと一進一退の攻防を続けていた。

 少しでも手を緩めればやられる。

 それ程までの攻防だった。


「このままじゃ埒が明かないわ!! ケンカしてた頃の連係プレイで行くわよ」


『アレをやるのかよ』


「それしか他に突破口ある?」


『――分かった、その賭け乗った!!』


『何を企んでるか知らんがこの俺は倒せんぞ!!』


 俺とサエはレオスに向かっていった。

 俺はレオスの剣を受け止め、そして――


『なに!?』


 サエが俺を飛び越えてレオスに飛び蹴りを仕掛ける。

 揺るいだところで俺はサエの手を掴み、サエの両足を相手の顔面側頭部に目掛けて叩きつける。

 流石にガードされたが――


『おらぁ!!』


 今度は俺が殴りに行く。

 怯んだところでサエが俺に向かって駆け寄り、俺はバレーのボールを両腕を受け止めるトスの姿勢を取る。


『はぁ!!』


 そしてサエが俺の両腕を踏み台にして相手に向かって3度目の蹴りをかます。

 

『ぐほぉ!!』


 相手の胴体が陥没するほどの一撃。

 そこが狙い目だった。


「『いまだ!!』」


『ッ!!』


 俺とサエの斬撃が決まった。


『異界の少年少女に――討たれるか――悪くはない、最後だ』


 俺とサエは何とも言えない気持ちになりながらもその場を後にした。



 Side 荒木 将一


『チィ!!』


 フリーゼと空中で二対一の接戦を繰り広げていた。


『うぉおおおおおおおおお!!』


『いっけええええええええ!!』


 もはやテクニックだの戦術だの関係ない。

 お互いの呼吸頼みの、これまでの戦闘での経験の勘だよりの出鱈目な戦い方だった。


『なんて出鱈目な――』


『合わせろ梨子』


『任せて将一!!』


 どんどん連携が研ぎ澄まされていくのが分かる。

 より加速していく。


『おおおおおおおおおお!!』


『なに!?』


 蹴りが決まった。

 続いて梨子のビームピストルが着弾した。

 その程度では相手の装甲は抜けないが――


『これで終わりだ!!』


『なに!!』


 至近距離での背面左側に搭載していた折り畳み式のキャノン砲――もといビームキャノンを押し当てるようにして突っ込む。

 

『いっけええええええええええええええ!!』


 俺は躊躇いなく引き金を引いた。


『ここで負けるのが定めか――』


 それがフリーゼの最後の言葉だった。



 Side 藤崎 シノブ


 何度ノワルと剣を交えただろうか。

 ダブルセイバーの手持ちの近接武器はボロボロだ。


『どうした? もう剣はないぞ!?』


『確かにこの機体の剣はな――』


 絶体絶命の状況だ。

 だがあるんだよな、異世界から持ち込んだ剣が!!


『なに!?』


 剣が手持ちに出現する。

 最強の剣の一つ、人の手で作り出された聖剣。

 

 シャインエッジ。


『美しい――』


『これを抜いたからには負けは許されない。次の、全力の一撃で勝負を決める!!』


『成程。ならば俺も本気で迎え撃とう!!』 

 

 静寂。

 静かだ。

 僅かな時間が何秒にも引き延ばされるような感覚。


 だがここは戦場。


 この感覚に身を委ねては命取りになる。


 だから――


『はぁああああああああああああああああ!!』


『速い――!!』


 勝負は一瞬で決した。

 相手の剣を断ち切り、鎧を切り裂いた。

 

『見事な一撃だった――悔いなく、冥府へ行ける――』


 そしてノワルは倒れ伏した。


『粗方片付いたよ――それにしても君がその剣をこの世界では使うとは余程の相手だったんだね』


 と、谷村さんがそばに駆け寄ってくる。


『ああ。強かったよ』 

 

 何とも言えない気分だ。

 試合に勝って勝負に負けたような気分だ。

 だがそれでも勝たねばならなかった。


『大将格は粗方倒した――』


『後は――はた迷惑な王様と宰相だか大臣だかそれっぽい人ぐらいか』


 そう思った矢先。

 エルドラドの甲板の一部が展開。

 そこから巨大な漆黒の二本角の悪魔が現れる。

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