ぼくの考えたさいかわの魔法少女と日本でキャッキャうふふする筈だったのに少女ごと異世界召喚されちまった淫獣がこちらです。

茉白 ひつじ

プロローグ 

1 プチ追放されちゃいました

「猫さんよぉ……一体どういう事なのか説明してくれるんだろうなぁ?」

「バッカお前、俺だって意味わかんねーっつーの! これからって時にだぜ? よりによってジャンルが変わっちまうとは夢にも思わねーわクソが!」

「ただでさえ訳わかんねー状況なんだぞ! ちゃんとあたしがわかるように言え!」

「アカリちゃんはさぁ……って、言い合っててもしゃあねえよな。今はとにかく周囲を調べようぜ……」

「そうだな……」


 サワサワと風になびく草の音。どこまでも広がる草原に嫌味なほどに澄み渡った青い空。周囲には人の気配はひとっつもなくって。


 緑の海に降り立って遠い目をしているのは赤茶けた髪を肩まで伸ばした美少女とフサフサとした美しい毛並みの白猫、一人と一匹。


 日差しを浴びて神々しく輝く白い美猫――それが俺。名前はシャロ。モフモフとして愛くるしく、世の女性達の間で好感度急上昇中の俺には秘密があってな? 実は俺、様々な生命体が暮らす『ユリカゴほし』の管理者、そう神様だったりするんだわ。


 今でこそ、こうしてモフモフとしてっけどよ、俺って他銀河のとある星系を管理している神々の中の一柱でさ、同僚たちの間で『慈愛のシャロラーニュ』って二つ名を囁かれるくらい優秀な管理神なんだわ。


 でもまあ、なんつーか、その。『慈愛』が過ぎてな? 


『シャロくん? 今更だけど、ほんっと今更なんだけど君って女癖悪すぎるよねー。他神が管理するユリカゴに降りるなとは言わないわよ? 私やリーちゃん、最近だとミーちゃんもユリカゴで面白おかしく遊んでるからね。でも限度があるの。現地の女の子達の家を転々としちゃうのはまあ、いいわよ? 女神としては許せないけど、管理者としては許します。けどね、お仕事に影響を及ぼすのは許せません。君がユリカゴ運営に致命的な影響を与えかけたのって過去に12回もあるんだよー? それも他神よそのユリカゴで! 何度私が頭を下げに行ったかわかるかしらー? お詫びに持ってくお菓子だってただじゃあないのよー? 大体君はねー』


 とうとうガン切れしてしまった俺より上位の女神直属の上司からクドクドクドクド説教されてさあ。いやほんとまいったよ。


 ちょーっと聖女的な娘さんと仲良くしちゃったり、女勇者ちゃんと遊んじゃったり、魔王ちゃんと大人のオママゴトをしちゃったりしただけじゃないの。


 エースパイロットちゃんがロボットに乗るのやめるーって言ったのは俺のせいじゃねえし、超能力兵団の団長ちゃんが普通の女の子になりたいってゴネだしたのだって団長ちゃんの考えじゃんな。俺は女の子に優しくしただけであって、別に神々が作り出した世界観をぶち壊そうとしたわけじゃねーっつーの。


 お説教を受けている間、そんなことを考えていたのが悪かったんだろうね。上司のブーケニュールちゃん、見た目は好みなんだけど、中身は極悪だからな。あの女神。ニッコニコしながらエゲツねえ事言い出しやがったんだ。


『うーん、やっぱり今のシャロくんに必要なのは反省だよね。リソース没収した上でちょーっと遠くまで飛ばすから、自分で帰ってこれるまで研修のつもりで色々と学びなおしてきてね★ 真面目に励めば1200年くらいで帰りのリソースが貯まるわね。うん? 心配しなくてもいいわよ。帰ってくるまでまでシャロくんのユリカゴは私達が面白おかしく弄っといて上げるから安心してねー』


 なんて言いやがったんだぞ。酷くね? ブーケニュールちゃんは1級管理神、それも上位ランクだからいいよな、複数のユリカゴ持てるんだからさ。それに比べて俺って2級よ? それもなりたてのペーペーだ。1個! 管理許可が降りるユリカゴは1個だけなの!


 せっかくさ、緻密にパラメータを弄って『やがてぼくをかわいこちゃんたちが崇めてくれるようになるさいつよのユリカゴ』を構築したってのに。よーやく知的生命体発生の兆しが見えてこれからだって時だったのに。


 土下座の体制から頭を上げたらもう天の川銀河とかいう辺境に飛ばされてんだもん。言い訳の1つもさせてくんねえんだ。頭おかしいわ、あいつ。


 それもさあ、獣の姿――地球で言うところの猫に変えられてたんだぜ? マジえげつないわ、あの女神。それじゃあ良いことできねーじゃんな。まあ、虫に変えられなかっただけマシだけどな。あいつが本気でキレたらそんくらい軽くやるからな……。


 そんな上司に1200年もユリカゴを弄られちゃあこれまでの苦労が台無しになっちまう。他の上位神ならともかく、ブーケニュールちゃんはマジでやべえ。確実に俺の仕込みに気づいて面白おかしく魔改造するに決まってんだ。


 だから手遅れになる前に急いで神力を集めて故郷まで転移しねえといけないわけですよ! 俺の天国を守る必要があるわけなんですよ!


 つーわけでさ、どっかお邪魔させてくれるユリカゴねーかなーって、俺にリソースをお恵みをーってフラフラしてたら地球にたどり着いたわけなのよ。クソ田舎の星系にあるくせに、ある意味有名なんよね、ここって。


 このユリカゴは実験惑星のひとつでさ、何柱もの上位管理神達が分割して管理してんだわ。そのせいかしらねーけど、おもしれー文化がホイホイ生まれてな。今じゃ管理神達の保養地みてえになってんだ。俺のお気に入りでもある『勇者と魔王が居るような世界』の発祥もこの地球だ。辺境で遊ぶ……研修するならここしかねえなって思ったわけ。


 ただ、一つ問題があったんだよな。他神が管理するユリカゴで正式に活動するにはそこの管理神に許可申請を出さなきゃねえわけよ。

 

 地球って何柱も管理神が居るからさあ、活動許可申請出すのめんどくせえんだわ。いやまあ、誰か一柱に出せばいいんだけどよ、神界にもクソ見てえな派閥もあっからね。誰に頭下げれば丸く収まるんだろうなって。


 そこで思い出したのよ。何回か神界行事飲み会で絡んだアマテラさんが居るとこじゃんかって。


 あの神、確かブーケニュールちゃんのお友達だったと思うんだけど、アレと真逆ですげー優しくってな。何度あの神とうちの上司交換してくんねーかなーって思ったかわかんねーレベル。


 だもんで、これ幸いとメッセージ送ってお願いしたわけよ。


『地球まで修行の旅に出されました。どうかしばらく貴女の管理地でオシゴトさせていただけませんか』


 って。


 そしたらそしたら――


『ま、いんじゃね? がんばればー。ねね、それよりこっちいるうち飲みいこーよ』


 ――ですよ。軽い軽い。彼女ってそこそこ偉くて顔が広いからさ、アマテラさんに許可貰いましたーって言っとけば他の神も文句はいえねーってわけだ。持つべきものは良き飲み友達ってな。


 つーわけで、俺は彼女が管理する日本とか言うエリアで稼ぐことになったわけだ。


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