十月一日0730

朝の港は騒がしい。それぞれの職場や学校へと行く人、自転車、バイクに車。雨の日も風の日も毎日繰り返される当たり前の光景だ。

「全部見納めだな」

「二十四年って思ってたより早かったね」

潜水艦を臨む公園のベンチで通勤ラッシュを肴に薄いコーヒーを兄と啜る。疫病の魔の手が迫っていようと営みを完全に止めることはできないのだなと、頭の片隅で思う。公園にちらほらと人がやって来る。ジョギングや散歩の親子に混じってちょっとお高そうなカメラを持った人の姿も見える。

「愛されてるね」

「俺たち毎日同じ顔してるのにな……。長(たけ)、そろそろ行くか」

「はーい」

二人一緒に最初の一歩を踏み出す。秋の空は高くどこまでも澄んでいた。


鳴り響くラッパ君が代と繰り返しの日常。その全てに愛があった。


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