五月一日

今日は昨日に引き続きゴールデンウィーク。いつもの呉ならば、観光客が増えるだけで艦艇は静かに休みを満喫していることだろう。だが今日は節目だ。艦艇の大小に関わらず港中の艦艇に五色の旗が翻っている。もちろん、無法地帯と名高いHバースの二隻も他に倣(なら)い満艦飾で着飾っている。なぜならば今日は日本中が新しい時代の到来を祝っているからだ。

「あっ、満船飾」

煙草を吹かしながら、バースの端に目をやると、白と青が印象的な船にも五色の旗が掲げられている。

「もうちょっと晴れてたらなー」

大きな独り言と共に灰皿に煙草を押し付ければ、鉄板と煙草の紙が擦れて小さくジャリジャリと鳴った。そして、ふと思い出したのは自分とは違う暗いピンク色のリノリウムの床。使い込まれた海図台のペン立てに油性マジックで書かれたアルファベットがなんとも間抜けだったのが今更可笑しくなってきた。その艇の【艦霊】に指摘することは無かったが、きっと指摘していてもあっけらかんと笑うだけだっただろう。

「……さすがに満艦飾の順番のメモってカッコ悪いよな」

新しい煙草に火をつける。紫の煙が天へと昇る。新しい朝は誰も悲しまない。

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