十二月三十一日

現在、時刻は新年五分前。呉の港は静まりかえり、その時を今か今かと待っている。俺はというといつものHバースで一人ぼんやりと鉄工所の火を見ている。一人といっても周りには民間の船もいて寂しくはないが、ぽっかりと空いた一隻分のスペースのせいだろうか心なしかいつもより寒いのだ。

「あー、さむー」

時計を見れば今年も残すところ数秒。

「五、四、三、二、一」

呉の自衛艦艇が一斉に汽笛を鳴らす。潜水艦は太く低く、護衛艦は勇ましく。それらに比べれば俺たち掃海艇の汽笛なんて少々間抜けのように感じるのだが、しっかりと確かに鳴らす。たった一分間の合唱が新年の星を震わせる、この瞬間が好きだ。

「あけましておめでとう」


今日が佳き日となるように、今年が佳き年となりますように。


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