盟友X

当時東寺

初期衝動

 始まりは『透明人間』という小説を読んだところからだった。

 私は貴方の才能に酔いしれ溺愛し恐怖さえも覚えた。

 私は馬鹿だからほとんどの事をこの小説から学んだ。


 そんな小説が世間では駄作の烙印を押されているのを知ったのはしばらく後のことだった。

 確かに途中から小難しくなってあまり理解出来なくなる。

 文章も読みにくくなってとても親切な小説とは言えない。

 でもその烙印が許せなかった。


 次第に貴方のことが知りたくなった。

 この無限大の海で貴方の人間像が少しだけ浮き彫りになった。


 貴方は顔は良くないしそれほど頭も良くない。

 捻くれていて引っ込み思案ですぐ馬鹿にされる。

 ちょっとしたことで苛立って我を忘れぬよういつも闘ってる。残念で凄く可愛い。全てが愛おしかった。


 これが恋だと知ったのもしばらく後だった。

 貴方の小説には恋なんて一つも描かれていなかったから。


 その感情を知った時私は深く絶望した。

 私と貴方には無限大の壁が存在した。主に二つの弊害。

 この絶望を受け入れるには容量が足りなかった。


 しかしこの絶望から立ち直るにはそう時間を要さなかった。

 貴方とは仕組みが少し違うからかもしれない。そして何より私は知っていた。

 私がどうすれば貴方に気付いてもらえるかもタイムトラベルという言葉も。

 全部貴方の小説から学んだことだった。

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