氷像少女は溶けだして

SEN

プロローグ 美しき氷像

 コンコンとチョークで文字を書く煩わしい音も、興味のないことを説明する先生の声も右から左へ抜けていく。陽の光が差し込む窓際の席で、私のペンは役割を果たすことなく転がっていて、教科書のページもきっと合っていない。模範的な高校生なら授業に向けているはずの集中力を、私は右前の席で真面目に授業を受けている少女に捧げていた。


 陽の光を受けて宝石のようにキラキラと輝く長い銀髪。シルクのようにのように白い肌。絵の中から飛び出してきたような整った顔立ち。全てを見透かすような鋭く青い瞳。神が心血を注いで調整したであろう完璧なプロポーション。平凡な教室に似つかわしくない、他の全てとは隔絶された美。


 彼女はまるで氷像のようだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る