第2話 一日にして資産価値が…

「堀くん、これも20%も下がるぞ。ああこれなんか1000円下がる…。全部返品だ…」


 3月末、社長が調剤室のまだ箱ごと保管してある薬を、あるリストを見ながら回ってました。


 リストには現在の薬価と4月1日から適用される新薬価が書いてありました。


 

 薬価ってお上が決めています。

 たばこといっしょです。


 もし富士山の上や離島に調剤薬局があったとしても、

 調剤における薬価は銀座の店といっしょです。


 あくまで薬価です。


 お店により、基本料とか調剤加算とかが店の規模や設備、お薬手帳を持ってきた、もってこない、前回の処方日から3か月以内かどうか、そんななんやかんやで差があります。

 よってどこの薬局でも同じ日数、分量の処方があったとしてもお支払いはいっしょではないのですが、薬価は同じなのです。


 薬価、ほとんど下がりました。

 これって大変なことです。


 3月31日まで仮に1錠100円の薬が4月1日から85円になったとします。


 僕ら薬局は詳しく書いてもかまわないのですが、

 この100円の薬、90円で仕入れているとしますね。


 1日で仕入れ値より下がってしまいます。

 仕入れ値より下がらなくても、利益がぐっと減ってしまう薬がほとんどです。


 何百万円と在庫している薬品の大部分です。


 在庫は資産ですので、一日にしてそれが数十万円目減ります。


 もう全部丸損です。小売りというか薬局の丸損です。

 高い時に仕入れたからといって、高い薬価では処方できません。


 できるだけ返品をし、在庫をしぼるのですが、

「薬局に行って薬がない…」

 それは困るので、できるだけのことしかできません。

 うちも実は2000種以上の医療用の薬を在庫しています。


 がんばって返品つくってました。



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