第23話 「赤ちゃん扮装嗜好(オートネピフィリア)」


部屋に入れられた際に彼女は身一つで放り込まれたらしく、全裸のままでそこにいた。

恥ずかしいと怖いの二つの感情が混じってるようで赤くなったり青くなったりしている。

頼まれているものは髪と血液。

どちらを先にするか思案して血液を優先。

影から採血の道具と手袋を出し、手袋をさっとつけて女に歩み寄って片腕を掴む。


「触らないでっっ」


まぁ、予想していたが手を振りほどかれた。

大人しく動かずにいるなら特に何もせずに終わんだけどなぁ、と思いながら首を鷲掴んで床に引き倒す。


「ヤダヤダ!なにすんのっ!」


うつ伏せで地面に押さえつけて背中に馬乗りになって容赦なく首に針を刺した。

完全にマウントを取ってるので足をばたつかせることしかできない状態で血を取られた女はシクシク泣き出し、恐怖でぴたりと固まる。


静かでいいなと思ってると背後で扉が開き、向こうの用を済ませた二人が入ってくると女がまた暴れだした。


「わっ、ごめんよ!余計な刺激を与えちゃったね」


上機嫌な鈴蘭すずらんはそう言いながら右手に持ってるハサミをプラプラと見せてくる。


『ちょうど必要な分はり終わったからいいよ』


首から針を抜きながらそう言い、影へしまう。


「そのまま体押えててよ、私が髪を採ってあげる」


そう言うや否や正面に来て女の髪をラバーゴムで何束かに分けて結び、樹に大きめのジップロックを渡す。

10束くらいに分け終えると、次はバツンと1束ずつ根元から切断していった。

そうすると、案の定女は大声で騒ぎだしたが、身動きは取れないので泣き喚くのみ。



即席ヘアドネーションみたいなものが終わり、すすり泣く女の上から降りると服がべたついてることに気づいた。

なんだこれと思ったのは一瞬のことで、すぐに女の体液であることに気づく。


『汚れ落としてくるから施錠しといて』

「おっけー、こいつの汗とか嫌だもんね!行っといでー」


その返事を聞いてすぐに部屋を出ると、手袋は外してバクの中に落として消滅させ真っ直ぐ脱衣所へ。


服を全部脱いで洗濯機へ放り込み、手早く髪をまとめ浴室に行きお湯を浴びる。

軽く体を洗ってすぐ出て体を拭いたときに気づいた。


『服準備するの忘れた…』


とりあえずバスタオルを巻いたが服は部屋に行かないと無いのだ。

行くには廊下に出ないといけない。

詰んだ…。


二人を待たせてるのでもたもたしてもいられず、意を決してドアを開けるとちょうど廊下に居た二人とご対面。


「!?!?!?」

「随分と刺激的な姿で出てきたね」

『服持ってくるの忘れたんだよ』


絡まれて面倒になる前にサッと部屋に入り着替えてを済ませて戻る。


『準備ができたから二人がよければ行こうか』


異論はないようでそれぞれ荷物を持つと鈴蘭の車で行くことに。



三人で車に乗り込み樹の運転で駅まで行く。

そこからは電車を待ったり、乗り継いで行き店に到着。

タクシーから降りて裏口をノックすると。


「あらぁ、私の可愛い子が来たわっっ」


勢いよく扉が開き中からムキムキのマッチョが出てきて、紅にガバリと抱き着いてくる。

190㎝と少しの身長の男に抱き着かれると体格の差のせいで宙ぶらりんになってしまう。


「久しぶりに連絡してくれたと思ったら自分から来てくれるんだものっ!しかも初めての来店!!」

『今日も随分と元気だね…』


マッチョの腕で抱えられたままプラプラと吊るされた状態で苦笑しながら話をして後ろの二人を見る。

鈴蘭は興味深そうに見ていたが、何故か樹は無表情でじっと見てた。

その後はすぐに降ろしてもらい、全員で店内へ。

開店準備中だったらしく従業員がせっせと働いてるのを横目に案内されたVIP席に座る。


「さて、座ってそうそうだけど話を聞かせてもらおうかしら。」

『依頼は私の顧客じゃなくて、鈴蘭の方なんだけど、赤ちゃん扮装嗜好オートネピフィリアのご婦人が自分のお世話をしてくれる母親役を探してるんだよね』


・対象の依頼を受けてくれる人は必ず女性であること。

・できれば長期期間にわたって請け負ってくれる人がベスト

 (ただし、どうしても見つからない場合は短期で受けてくれる人を数人)


そういった細かい内容を伝えると


また特殊なのを持ってきたわねぇと頬に手を当てて考えてくれたが、今日の予約客の中にはそういった趣味の者はいないとのこと。


「その依頼は数日待ってもらうことは可能かしら?」

「それに関しては問題ないよ」


お客にそれとなく聞いてくれるということで、この件は数日保留ということに。


『あとは、頼まれてた物がこの紙袋の中ね』


影から出した物をテーブルの上に出して渡せば中身を確認して大事そうにしまいなおす。

その後四人でそれぞれの情報を提供しあったりして話が盛り上がっていると、あっという間に数時間が経過していた。

全員が有意義な時間を過ごせてちょうど店の開店時間の23時が近いので解散しようと思ったその時


コンコンコン。


ノックの音が部屋に響く。


「入っていいわよ」

「失礼します。オーナー、少し込み入った話が来てるんですけど…」

「この人達は私たち側だからそのまま話してちょうだい」

「○○店のキャストが4回目の爆弾をやらかしたらしくて」

「あら、ごみ捨てってこと?誰がやっちゃったの?」

「ハルトっていうキャストです」


ごみ捨ても面倒なのよねぇ、と呟きながらウタは見学していきなさいよと言うので3人でウタの後ろをついて店を出た。

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