02_新たな危機
「俺は、クロノ。影の国の住人だ。その女を殺しに来た」
影の国の住人……。朱音を殺しに来た……。やっとダーカーを倒せたのに、なんだ、この状況。
クロノは、拳銃を黒瀬に向けて落ち着いた鋭い口調で言った。
「お前、その女を治そうとしているな。それ以上、光を送り続けるなら、お前も殺す」
「何で、朱音の命を狙う」
「その女、影隠師だろ。影隠師は、我々の敵だ。あのお方から、影隠師は一人残らず
そう言うと、クロノは、黒い服を
「お前は、影隠師ではないだろ。手首につけている誓いの輪がない」
黒瀬は、紅園の手首を見てみると、確かに赤い輪っかのようなものが付いている。どうやら、影隠師のメンバーは、誓いの輪と呼ばれる輪っかを手首につけているらしい。
「本当は、誰かを殺したい訳ではない。その女に光を送るのをやめれば、影隠師でないお前は助けてやらなくもない」
クロノは、銃口を黒瀬のこめかみにさらに押し付ける。
「それはできない!彼女は僕の命の恩人だ!彼女がダーカーから、救ってくれなかったら、僕はこうして生きてはいない」
黒瀬は、まっすぐクロノの方を見て訴えるように言った。黒瀬の手は、死の恐怖で小刻みに震えていた。心臓は、
「そうか、なら、死ね」
クロノは、黒瀬のこめかみに当てた拳銃の引き金を引く。
思わず、黒瀬は目を閉じるも、少しでも光を紅園に送り続けた。
弾丸の音が周囲に響き渡る。地面を
「やっぱり、やめだ。今回は見なかったことにしてやる。俺のミッションは、影隠師を殺すことだ。お前を殺すことじゃない。今回は見逃すが、次会った時は、お前も殺す」
黒瀬が目を開けると、拳銃から放たれた弾丸は、近くの地面に食い込んでいた。弾丸で貫通した地面は、穴が空き煙が伸びている。
クロノは、拳銃を自らの影に戻すと背中を向け黒瀬の元を立ち去る。
黒瀬は、その背中を見るのがやっとで、石にでもなったみたいに、動けない。とにかく、生きている心地がしなかった。
「ああ、そうだ。いいことを教えといてやる」
そのまま、立ち去るかと思われたが、急に何かを思いつき、クロノは立ち止まった。
黒瀬は、ぎゅっと拳を握りしめ、つばを飲み込んだ。ほんの一瞬、時でも止まったかのような静けさが、訪れる。一秒、一秒が重い。黒瀬にとって、重苦しい時間が流れていく。
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