第12話 どうする? ……旦那の浮気相手から惚れられたら

「うわぁ。なんかヤキモチ妬いちゃうよ!! こんなに可愛い人だなんて聞いていなかった。上野主任も罪な人だよねぇ――。こういう人を裏切るのはほんと許せない」


ゴンと、私の頭にお兄さんのこぶしが降臨した。


「当事者のお前が言うのかそんなこと!」

「ご、ゴメンなさぁい」

マジ痛い!


でもさ、本当に可愛い人だ。この寝顔写真に撮っておきたいくらいだ。


「でもなんで今の時間、それもこの状態って泊っていくてこと? うわぁ――お兄さんもやるぅ! これは不倫確定だね」


再びこぶし降臨!!


ほんと痛い。お兄さんのこぶしは昔っから遠慮って言うものが無い。

脳みそ、そのうち壊れちゃう。いや、すでに壊れているのかもしれない。


物心ついたころにはすでに、お兄さんの存在は私にとって大きな存在だった。

従妹と言う関係だけど、実際は兄妹のように育った私達。そして私はこの兄を本気で愛してしまった。


しかし、この愛は決して受け入れてもらえる愛ではないことを、高校の時に確信した。


嫉妬から生まれる恋愛思想。


私のお兄さんに対する愛は、嫉妬の中でしか燃え上がらない。


私が高校生の頃。お兄さんには彼女がいた。そうだ、上野主任の奥さんのように可愛らしい人だった。

多分、何もなければあの二人は、結婚まで至っていたと思う。

それだけ親密な関係だった。


その関係を私はこの体を使い……壊した。崩壊させた。

愛するお兄さんを他の女に取られたくなかったから。


お兄さんは私だけのものだあって、永遠にほかの女には渡すことは無い。


しかしそれは私の勝手でもあり、お兄さんからすれば迷惑なこと。それに障害物(お兄さんに近づく女)がなくなればこのメラメラとした愛情は沈静化する。そうすればただの兄と妹のような関係に戻るのだ。


戸籍上は従妹の関係である。その気になれば、結婚は出来る。しかし、お兄さんは私に対してそんな恋愛感情はもってはくれないし。私の気持ちが燃え上がるのは、彼に女が付いたときだけだから。


だから、この愛は決して受け入れてもらえる愛ではないんだ。


それを踏まえたうえで、私はまた同じ過ちをこの兄にかせようとしている。

間違いなくお兄さんは、この女性ひとのことを愛している。それが今日抱かれた男の人。会社の上司、先輩の奥さんであるというシチュエーションだ。ああ、体がうずいちゃうよ。


「お兄さん今晩もちろん私も泊っていいんだよね」

その問いにお兄さんは少し怪訝そうな顔して。


「そのつもりだ。そして明日の朝。俺と一緒に上野さん。麻奈美まなみさんに詫びを入れよう。いいな!」

「詫びって……謝ること?」


「そうだ。お前のしていることは倫理に外することだ。謝って当然だろ」

「まっ、そうだわねぇ―。確かに」


言われると何も言えないところだけど、じゃぁ先輩の方はどうなるんだろう?

今のところは素直に従おう。それにしっかりと聞いちゃった。麻奈美さんていうんだ。


姿も可愛いが名前も可愛い。すべてがもう可愛いい。先輩と同い年だって聞いていたけど、そうなれば私より年上って言うことか。

あれ? なんだろうこの感じ。なんか変だよ。


お兄さんと先輩の奥さん。麻奈美さんを離したいということより、なんだろうこうして傍にいるだけで、変な気持ちになってくるんだけど。


「ううん……雄也ぁ!」

うわぁ、寝言で先輩の。旦那様の名前言ってるよ。


これ、別な方にスイッチがはいちゃいそう。いやいや……どうしよう。

や、やっぱり。一目ぼれって言うのか? 同姓に一目ぼれ。


ああ、この人なんで先輩の奥さんなんだ?


駄目だよ! あんな男と一緒にいたら。


――――私が救ってあげる。



おねぇ様。




雄也、雄也。どうしたの? なんだか体少し小さくなちゃったんじゃないの?

体つき変わってきた? なんだか雄也の体じゃないみたいだよ。


あああ。やわらかい。雄也の胸やわらかいよ……。んっ? やわらかい? むにゅっとして、なんだかおっぱいみたい。


――――おっぱい??


ほうら罰が当たったんだよ雄也。

雄也の体女の体になちゃったんだよ!! 浮気なんかするから、神様が浮気できないように体つくり変えちゃったんだよきっと。


あはははは。雄也女の子になってるぅ!!! あははははは――――!


ん? な、なんだ。

すっごく変な夢見ちゃってる。


雄也が女になちゃった夢。そんなのあるわけないよね。


はっとして目を開けると布団の中には雄也じゃなくて。


……誰?


で……なんで下着姿なの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る