-5- 憧れの人

しかし、真夏には、高1の頃から、クラスに憧れの男子がいた。

初めて彼に目がいったのは、高校に入学して、クラスの雰囲気が落ち着いてきた5月の体育の授業だった。

「大星、ナイッシュー!」

バスケットゴールにすんなりボールをシュートする男子、須崎大星。

大星は、真夏にとっては、「いわゆる『普通の』男の子」だった。

はぐれ者の自分とは全く違う人種なのに、自分の目線がよく大星に向かうことに対して、真夏は自分を責めていた。

高1の時も高2の時も、たまたまクラスが一緒になったため、真夏は大星の姿を見られるなら、頑張って学校に通おうと思えた。

といっても、高1の時には、とうとう、一回も話す機会がなく、高2に上がることとなった。昌彦には、大星のことは話していなかった。自分の中にある大星への気持ちを、認めたくなかったからだった。それに、大星のことを昌彦に話すと、昌彦が自分から離れていかないかと心配だった。昌彦は、自分のことを理解してくれる、唯一の大人で、唯一の人間だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る