奈良井

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 腹ごしらえしたら、次は奈良井だ。昔の宿場町の風情が残っている情緒あふれる街だ。五平餅でも食べて一服しよう。


12:36 小淵沢

 |JR中央本線

13:34 塩尻

13:45 塩尻

 |JR中央本線

14:09 奈良井

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 次の目的地へは、途中で乗り換えが必要だ。小淵沢を離れ暫く経ち上諏訪駅を過ぎると、車窓から諏訪湖が見えてきた。途中下車すると接続の関係で2時間待ちとなるため、残念ながら諏訪湖は車窓から楽しむだけだ。


 そして諏訪湖を後にトンネルを抜け、しばらく走ると乗換駅の塩尻駅に着いた。塩尻駅での乗り換え時間は11分。駅を出て周辺を散策する時間は無いので、すぐに中津川行きの電車に乗る。始発駅なので座ることもできたし、クロスシートが嬉しい。塩尻までのJR東区間はロングシートの電車しかなかったが、塩尻からJR東海区間となり、なぜかJR東海の車両は中央線に限らずクロスシートが多いようだ。


 出発時間となり、電車が発車すると車内アナウンスが流れた。この路線はバスのように乗るときに乗車券をとり、降りる時は運転手に切符を見せて先頭車両にある料金箱に運賃を入れるワンマンカーとのことだ。こんな電車には初めて乗った。この路線では多くの駅が無人駅のため、このような仕組みとなっているのだろう。普段、乗りなれていない電車でも、”きっぷ”を見せるだけるで乗り降りできるのが『青春18きっぷ』の良いところだ。


 山の中を走ること20分ちょっとで奈良井駅に到着した。宿場町らしい木造の雰囲気のある駅舎だ。中央本線には奈良井宿の他に馬籠宿と妻籠宿の宿場町があるが、どちらも駅から離れており路線バスを使う必要がある。奈良井宿は奈良井駅から歩いて5分ほどで宿場町まで行けるのでアクセスがしやすい。


 奈良井駅を出ても強風は未だに強く、そして、冷たい。三月の末でも標高900m越えの山間部はまだまだ寒いことを実感する。線路に沿って歩くと、すぐに保全されている宿場町の建物が見えてきた。街道に沿って1キロほど江戸時代の街並みが残っているが、不思議と現代風の雰囲気も漂っており、古と今が混在する景色が印象的だ。


 コロナ禍の影響からか閉店中の店が多い。開店中の店も、扉が閉まっていると外から様子が伺えず、なかなか中に入りにくい。観光客用の土産物店では、現地のものなのか箸や木製のしゃもじなどが店先に並べられていた。


 10分ほど歩くと宿場町が終わる。さらに足を延ばして山道を登ると展望台があるようだが、山道には雪が残っており、時間もそんなにないので来た道を戻ることにした。


 初日なので土産物は買わず、五平餅を頂くことにする。うるち米と餅米を炊いて焼き、タレを付けて食べる木曽の郷土料理だ。店ごとにちょっとづつ違う個性があり、看板を見ながら一番安い店を選んだ。私がケチというわけでなく、それほどお腹が空いていないので、安い店は量が少ないだろうと考えたからだ。


 一軒の料理屋の扉を開けると、店員から”いらっしゃいませ”の声がかかった。オフシーズンなのか、それともコロナの影響なのか、私の他に客はいないが、壁には芸能人のサインが多数飾られており、観光シーズンであればお客さんで混みそうな店だ。


 ふきみそとえごまみその二種類セットの五平餅を頼むんでしばらくすると、こうばしい香りが漂わせながら、お茶を添えて運ばれてきた。熱いお茶が冷めた体を温める。五平餅も焼きたてで熱々だ。ふきみそは塩辛く、えごまみそは甘く、味のコントラストが面白い。見た目は小さいが、けっこう食べ応えがあった。お米でできているのだから当たり前か。


 体も温まったので、踏切を渡って”木曽の大橋”を見に行く。総檜造りの太鼓橋だ。作られたのは平成3年と最近だが、午前中に見た猿橋と同じく橋脚のない橋でとても美しい。近くに道の駅もあり、橋の下の奈良井川では家族連れが遊んでいた。


 奈良井宿で一時間半弱を過ごし、次の目的地は宿泊地の名古屋だ。


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