31日目(5/14)藪の中

 5月14日。ここに来てちょうど一カ月。今日は気持ちのいい快晴。久しぶりの晴れ間である。


 チビたちは今日も学校。私は久しぶりに朝が早くないので、今日は強い意志をもって11時まで寝ていた。母と買い物に行く予定は前々から立っていた。が、眠かった。何度かおこされたが狸寝入り(と本気寝入り)を繰り返していたら、11時ごろになって「お母さんもう行っちゃうから、一緒に行くなら3分で支度しな!」と言われ、やっと起きる。

 他のメンツにおはようも言わず、玄関先にあった車に乗り込む。母の愚痴るところによると、本当は午後に買い物に行く予定だったのが、10時半ごろになって「いつ買い物に行くのか」と祖母が怒りだしたらしい。「昼ごはんに間に合わないじゃないの! 早く行きなさい」とせっつかれたようだが、「今から行っても昼ご飯なんか間に合わないよ」と母はぼやいていた。

 買い物に行くといっても、スーパーとドラッグストアに寄るくらいである。それだけでお昼ご飯を準備する時間はとうにすぎる。「どうせ怒られるなら寄り道してこう」と母に誘われ、回転まんじゅうと煙草を買い海岸で一休みしてから帰った。今日の海は淡いライトブルーで、凪いでいて静かだった。


 お昼は少しだけ修羅場だった。祖母が明らかに、母からの呼びかけにだけ返答しない。子供の前でもあからさまである。

 母は「参ったねえ」みたいな顔をしていた。


 お昼ご飯を食べた後は、チビたちと共に、この島唯一の観光名所、宇宙センターへ。これを言えばどの島かピンとくる人もいるだろうが、ロケットの発射場などで有名なところである。中には無料で見れる展示や、実物大のロケットの模型などがあって、なかなか充実している。お土産にエイリアン型のボールペンを買った。喜んでもらえるといいな。

 

 帰ったら4時半くらい。帰って早々、祖母から「竹ん子取りやらせてあげる」と言われ、(半ば強制的に)手伝いへ。上から、首元に布のついたつばの大きな帽子、腕カバー、軍手、エプロン、長靴という重装備(もちろん長袖長ズボンである)。なかなかステレオタイプな農家らしい出で立ち。髪がピンクなことを除けば。

 お揃いの格好の祖母と並ぶと、「農家の嫁と姑みたいだね」と母に言われた。


 うちの裏には空き地があって、その外に大きな竹藪がある。竹といっても笹みたいな細いやつ。その竹藪に祖母はぐんぐん入っていく。笹をかきわけながら、不安定な足下に気を付けつつ、祖母に一生懸命ついていく。そのまま「そこにあるよ」と言われる竹の子をポキポキ折っていき、最終的には一抱えくらいの束になった。

 竹の子が取れたら、次は皮むきの作業がある。山になった竹の子をせっせと剥いていると、「顔のとこ赤くなってるけどどうしたの?」と祖母に言われる。いつの間にか虫に刺されていたらしい。私は文字通り痛くもかゆくもなかったのだが、やたら赤くなっていたらしく、祖母や母にはいたく心配され、ムヒまでつけてもらった。やはり私は虫に好かれるらしい。私は虫が好きじゃないのに。

 その後も祖母の愚痴(母の作るごはんは野菜が少ない、らしい。一人暮らしの民からすると野菜はかなり多いが……)など聞きつつひたすら竹の子を剥く。

「こんなにたくさん取ったけど、食べきれない分は人にあげるの?」

「いいや、この辺の人はみんな家に竹藪あるから、竹ん子なんてもらっても困る」

 そんな衝撃的な会話もあった。

 そんなこんなで終わる頃には6時前である。この辺は7時過ぎまでけっこう明るいから、まだ西日にすらなっていなかった。


 その後は、夕ご飯の前に弟がアブと戦ったり、お夕飯にはトンカツとお刺身(一カ月祝いらしい)を食べたり。今日は忙しくも穏やかな日だったなあ、と思っていたら、最後の最後で段差で転んで左足をくじいた。右足だったら車の運転が危うかったが、左足なのでギリギリセーフ。かもしれない。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る