第6話 出会い⑥

そして警官に満面の笑顔で会釈すると警官の前からそそくさと店の奥に引っ込んだ。

「ちょっと!」

警官が呼びかけても、店長は事務室から全く顔を見せる気配がなかった。




ラチがあかないと判断した警官はリュウとその店員に話を聞くことにした。

「すみませんが、カウンターで相手してた君、交番で話を聞かせてください。」




次に警官はリュウの方へ向き直ると口の端を上げてニッと笑った。

「リュウ君、いつもより時間早よないか?君にも話を聞かせてもらうで。」

この警官はリュウが酔っ払って暴れた客をよく連れて行く交番にいた顔馴染み。




「参ったなあ。でも今回は俺がきっかけだったから仕方ないです。子供に怪我させちゃったのがなあ、ほんと失敗。」

リュウはカリカリと頭をかいた。

「ち、違います!こちらのお客さまが、お客さまだけが私を助けて下さったんです。子供さんを怪我させたのはあの男です。あの男が暴れていたのをこちらのお客様が止めてくださったんです!」

リュウと警官の間に入るとスゴい勢いで女の子はリュウをかばった。




その姿に警官もリュウも目を丸くした。

「おお、そうですか。まあ、リュウ君はいつも暴れるのを押さえる方だから、リュウ君が怪我させたとは思わんよ。安心して。」

「そうそう。植木鉢を投げたんはアイツやし。」

「まあ、店長さんは話聞けそうもないやろ?ちょっと説明してもらいたいから君ら2人来てな。」


リュウと店員の女の子は警官に連れられて事情を話に行くことになった。

その前にリュウは一緒に来ていた後輩に声をかけた。


「リュウさん、大丈夫っす。ちゃんと俺、店長に話しときます。」

「おう、頼むわ。でもなあ、店長怒るやろなあ。今日、税理士の先生が来るから立ち会ってくれって言われてたんや。」




うーん、とつぶやいたリュウが警官を横目で見た。

「出来るだけ早よ返すから。リュウ君、行こか。」

「店長に謝っといて。終わり次第、駆けつけますって。」

大きくうなずくと後輩の若い男は小走りに去っていった。







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