第3話 出会い③


「うるさいな。聞こえてるよ。あの子は閉店する店からまわって来たバイトの子や。あんな奴、扱い慣れてるわ。僕は忙しいねん。そっちで処理しといて。」

「でも、このままじゃまた辞めますよ。」

「フン、辞めたらまた新しいバイト入れたらええだけや。」




眉間にシワを寄せた店長はうざそうに言うと、呼びに来た店員を事務室から追い出した。

ガチャリ。

すぐにドアの鍵をかけた。

「え、嘘?ちょっと待って下さい!」

店員がドアノブを握りしめ何度も回す。だが鍵のかかったドアを開けることは出来なかった。




悔しげにドアを大きく叩くと先輩の店員は店の表に向かった。そして店員の女の子と目が合うと頭を振り、胸の前で手をクロスさせた。


え?ダメってこと?

店員の女の子は目を見開いた。おそるおそる男の方を向くと怯えた声で詰まりながら答えた。

「あの、申し訳ありません。て、店長は今、手が離せないみたいで…」

先輩の合図を同時に見た男は顔を赤くして呻いた。


「なんや、貴様ら、俺をなめてんのんか?」

男が店員の女の子に大声で怒鳴り、今にも掴みかからんばかりに身を乗り出して来た。その隣のカウンターの店員はひたすら客のオーダーを取り、商品を渡している。店員も客も隣の様子が気になっている。だが関わり合うのを恐れて気づかないように振る舞っている。

男にしつこく絡まれている女の子はただ1人、顔色をなくして震えていた。リュウは大きくため息をつき男に声をかけた

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