君はいもうと

@ajtgjm159

第1章 出会い

第1話 出会い①

 煌びやかな色とりどりのネオンに彩られるまであと少し。オシャレな男女がかけ引きを楽しむ街、ミナミ。この街は今宵も喧騒に包まれる。


 黄昏時、黒のベンツで社長の瀬戸を事務所まで送り届けたリュウ。リュウは人気のクラブ、キップスのスタッフ。腕っぷしの強いリュウは手広く事業を行い、時には危ない仕事にも手を染める瀬戸のボディガードも務める。


艶のある黒髪に切長の目と高い鼻梁。冷たく整った顔に射るような眼差し。相手を怯ませるオーラを纏う。

リュウはスラリと伸びたヒョウのような筋肉質の体を黒のジャケットと白のシャツ、黒のパンツに包んでいる。


今日もクラブの後輩と出勤前の僅かな時間にコーヒーを飲もうと近くのファーストフードに立ち寄った。小脇にマンガ雑誌をはさんだリュウは長めの前髪を時折りかきあげながら後輩と列に並んだ。




だが今日はいつもより列の進みが遅い。

「なんか今日、なかなか前に行かないっすね。」

「ホンマやな。なんでやろ?」

「こんなんじゃ今日は飲めないんすかね?」

後輩はチッと舌打ちをすると腕時計で時間を確かめた。イライラしたリュウと後輩は身を乗り出して列の前方を見た。


店のカウンターのレジは2つ開いている。しかし客の列は1列。リュウ達の列の隣のレジには1人の小柄な初老の男の客が立っていた。男はくたびれた作業着に白髪まじりのごま塩頭。腕を大きく振って目の前にいるレジの店員に怒鳴っていた。


店員は女の子。まだ高校生くらいか。男に執拗に責められて小さくなっている。怯えた顔で一生懸命相手をしている。だが恐ろしくて声が小さくなり、男にはまともに聴こえていないようだった。

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