18、虹の向こう(※「16」「17」と関連あり)


森の奥に潜む大樹は人命を糧とし生きる

精霊は大樹に人を捧げることを使命とす

使命を果たさぬ精霊は死あるのみ


どんな音よりも森の音が心地良いのは

精霊が森に根ざす者だからこそ

所詮森でしか生きられない存在なのだ


だのに人を無理やり森に連れ込むことを諦め

その人を守ろうとする精霊がまれにいる

人への恋心のために死を選ぶ精霊がいる




その精霊も恋のために禁を破った

大樹に殺される前に森近くの崖から自ら身を投げた

精霊の友へこう言い残したという


雨上がりに森の上天高いところに現れる

虹の向こうにあるという死後の楽園

そこでいつまでもあの人を待つと




精霊の友は人の前に現れると彼女の言葉を伝えた

二度と森に入るなという警告とともに

その人は悲しみにうちひがれ涙したという


人は彼女の言葉通り森に再び入ることはなかったが

死ぬ時まで彼女を覚えていたのか

楽園で二人は巡り会えたのかどうかは誰も知らない




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