第二膳『カレーの冷めない距離』

(やっぱり懐かれちゃったか……)


 わたしの人柄というよりは、料理のせいなんだろう。

 すごくおいしそうに食べていたから。


 とにかく先日のお礼にと、お土産持参で、わざわざ訪ねてきてくれたのだ。


「まぁ、上がりなよ」


 そういうと嬉しそうに靴を脱いで部屋の中に入ってくる。

 それから少し鼻をひくひくとさせ、何とも言えない笑顔を浮かべる。


 だろうね。

 部屋の中いっぱいにスパイスの香りが広がっているし。 


「今日はカレーを作ったんだよね。良かったら食べてかない?」


 ちょっとびっくりしたような表情。

 それからすごく内面で葛藤しているのか、やたらと足元と天井で視線を往復させている。


 その間にわたしはさっさとカレーの支度を開始する。


 そんなつもりで来た事じゃないのは分かってる。

 図々しいと思われるのが嫌なのも分かっている。


 でもカレーの誘惑に勝てる人間はそうそういない。


「実は作りすぎちゃってさ。口に合えばいいんだけど食べて行ってよ。それにさ、一人で食べるより二人で食べる方がもっとおいしいと思うんだよね」


 お腹がグーと鳴る音が『いただきます』の代わりだった…… 


 ⇒ to be continued

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