異世界からの来訪者

 とりあえず外で話すのはこいつらの恰好的にもなんなので家に入れる事にした。


 「狭い家だが勘弁してくれな。お茶ぐらいは出そうと思ってるけど何か他に飲みたいものあるか?」


 「お気遣いありがとうシュウ。でも大丈夫だよ。すぐに帰ろうと思っているからさ」


 眩しいような笑顔をこちらに向けながら金髪は言う。くそっ!!どこまでもイケメンだなこいつ。...人生楽そうだなと心の中で愚痴りながら俺はさっそく疑問をぶつける。


 「単刀直入に言うがあんた達はあのオンボロな鉄くずみたいな剣が必要みたいだがその理由はなんだ?それ以前にあんた達はどこから来たんだ?どう見たって日本人には見えないけど・・・」


 思わず聞いてしまった。けど俺にはそれを知る権利があるだろ?そもそも剣を拾ったのだって俺だし?そう思って質問をした。だが、三人はまるで答えようとはしない、元々閑散としている地域という事もあってか辺りが無音に近い静寂に包まれる。あれ?なんかまずいこと聞いちゃった感じ? 少し不安に思っていると赤髪の少女が真剣な眼差しで


 「あんたには関係のない事よ。一つ言うのであれば大人しく渡してくれれば両者にとって都合がいいという事だけだわ。」


 「後、私達はこの世界の住人ではない。」


 「...ッ!!セレン!!そんな事別に言う必要ないじゃない!!」


 「これぐらいの情報は提供するべき。そうしないとこの黒髪の男の警戒も解けないまま。それに男が言ってた様に私達はこの国に適した容姿をしていない。別の地域から来たという線もあるけどそんなめんどくさい回り道をするなら本当の事を言って納得させた方が早い。」


 「別に渡さなければ力づくで奪うつもりだったからいいのよ!!」


 「...スカーレットはそんな性格だから学院時代に友達も彼氏も出来なかった。」


 「そ、それは関係ないでしょ!!だ、第一友達なんて邪魔なだけよ!!あの世界では結果こそが全てなんだから友情ごっこや恋愛ごっこなんて邪魔になるだけだわ...!というかそんな事言ったらセレンだって友達といる所なんて見たことないわよ!」


 「私は未練タラタラのスカーレットと違って本当に群れて行動するのが嫌いだっただけ。一緒にしないで。」


 「そんなの私だって...!!!」


 「ま、まぁまぁ!!二人とも落ち着いて。本来の目的は剣を返してもらう事だろ?」


 「う、すいません」


 「...ごめんなさい」


 「シュウもごめんね?二人とも悪い子じゃないんだ。」


 「あ、はい」


 スカーレットと呼ばれている紅髪の女とセレンと呼ばれていた青髪がなにやら言い合いしてた所をアルベールがスマートに止めている傍らで思わず俺は固まってしまう。

 おいおいおいおいまじかよ...本当にこの世界の住人じゃない人間だったのか。確かに顔の造りとか服装が明らかに日本人のものじゃなかったけどまさか本当に異世界から...嘘を言っている可能性もあるが俺はそれを嘘とは思えなった。大きな理由の一つとして俺はこいつらと初対面な筈なのにこいつらは剣の存在とそれを俺が持っていることを予め知っていたからだ。そんな中二人を止めたアルベールが口を開く。


 「さっきセレンが言った通り僕たちはこの世界の住人じゃない。それとスカーレットが言った様に深く関与せずに剣を渡してくれればお互いにとって都合がいいのも本当だ。だから再度お願いする。剣を渡してくれないか?」


 そう言いながらアルベールは真剣に俺の目を見ながらお願いしてくる。纏めると


 ・自分達は異世界からやって来た

 ・目的は俺が拾ったオンボロな剣

 ・返して欲しいが理由は話せない。


 という事か。正直剣に関しては全然返していいと思ってる。というか刀剣ショップに持ってくのもめんどくさいしそもそも存在そのもの忘れてたし。でもせっかく異世界人と会えたなら特有の何かを見てみたい!!...いや俺は見ねばならぬ!!オタクを代表してこの目に!焼き付けねばならぬ!てか見せてくれなきゃ返さないぐらいの気概でいってやる。


 「状況は分かった。あの剣にはなにかしら秘密があるんだろうけどそれを話せないという事も理解した。剣を返すことに関しても俺には価値が分からないから返すことに全然問題はない。」


 「本当かい!理解が早くて助かるよ!じゃあ早速で悪いんだけど剣を...」


 「ただしっ!!」


俺はアルベールの話の途中で割り込む。


 「あ、あんた達が異世界から来た人間だという確証が持てない!もしかしてあの剣はどこかの国の国宝であんた達はあたかも異世界人を装った窃盗集団であるという可能性も捨てきれん!!」


 自分で言っててもあまりにも無茶がある事を自覚しながらも俺は続ける。


 「だからあんた達が異世界人である証拠を!俺が納得できる証拠を見せてくれたら剣を渡そう!」


 ---その瞬間俺の首元には大剣の切っ先が向けられていた。


 「スカーレット!!!」


 アルベールが叫ぶが俺は状況が呑み込めずただ恐怖の本能からか両手を挙げる事しか出来なかった。


 「...バカな事言わないで。あんたには分からないのかもしれないけどあの剣は私達にとって必要不可欠なの。これ以上口答えするのであれば殺しこそしないけれどそれ相応の痛みを味わってもらうことになるわ」


 「スカーレット。やりすぎ。でもあなたも調子に乗りすぎ。こっちがいつでも剣を奪い取れる状況であるという事を忘れないで。」


 俺は思わず小便をチビりそうになるのを耐えながらも首がもげるぐらいに縦に振る。経験した事がなかったが分かる。これが本当の殺意だと。


 「スカーレット、とにかく剣をしまいなさい。」


 「し、しかし!アルベール様これぐらいしないとこの男は---」


 「聞こえなかったかい?剣をしまうんだ」


 そうアルベールが口にした途端先程のスカーレットの何倍も凄い覇気のようなものが部屋を包む


 「...ッ!!!も、申し訳ございません!!」


 スカーレットは顔を酷く青ざめさせながらすぐに剣をしまい座った。

 も、もう無理だ、さっさと剣を渡して帰ってもらおう。こんな空間命がいくつあっても足りん...!そう決心して抜けかけた腰をなんとか総動員し剣を取りに行こうとすると


 「重ね重ね部下がすまないね!.........分かった。今の非礼を詫びる意味も込めて僕たちが異世界から来た事を証明しよう。」


 「「アルベール様!?」」


 二人の声が重なる。

 俺の目的である異世界から来た証明をしてくれるそうだが俺の心は一つだった。



 





 


 (お願いだからもう帰ってくれ......)

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