「帰路」

 朝も雨で、夕も雨。やっぱり雨は嫌い。そんな今日の夕方。雨の中を対比されたような傘二つ。ただ帰路を歩いた。

「はぁー、つかれたぁ。やっと休みだよ」

 今週の下校は、彼女と一緒の日が多かった。特に意味は無い。その日の授業のことだとか、先月のテストのことだとか、たまに彼女がふざけて水溜りに飛び込んで僕の制服を濡らしたりだとか。そんななんでもない帰路だった。

「土日さ、流依くんってなにしてる?」

 「何してる」と言われても、その日の大半を寝て過ごしてしかいないので、少し戸惑ったが「寝てる」と素直に答えた。

「じゃあさ!」

 ちょっとだけ走ってから僕のほうを向いて話し始める。

「明日、うち来て!」

「は?」

「じゃ、そゆことで、私こっちだから」

 何を言ったのか分からなかった。何がどう繋がって「じゃあさ」なのかも分からないが、急に家に来いといわれ、何も返す時間を僕に与えず去っていった。彼女は確かに、詰め寄り方は特殊で、行動はあまり読めないが、そもそもの話僕は彼女の家を知らなかった。


――♪

『わすれてた』

『これわたしの家ね』

 彼女からのメッセージ。こんな簡単な文と共に、スマホに内蔵されているマップに『ココ』という文字とテキトーな矢印が書かれた画像が貼られていた。これが何とも分かりにくい。ギリギリ学校と知った道を画面の端のほうに見つけたので何とか理解できたものの、その画面に映し出されたほとんどの道が知らない道で、道のりをを理解するのにはどうしても時間がかかってしまった。

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