8話 鬼畜の所業

「理由は?」

「僕らはそれぞれ、大切な人たちを人質に取られてまして、抜けることなんて出来ません」


 あいつらしい手口だな……。

 

「じゃあ、そいつらを皆解放できたら、一緒に来てくれないか?」


 こいつらは家族も同然だ、見捨てるなどできようものか。


「それは、どう言う……」

「俺達で新しく国を作るんだよ、それぞれ魔族の国を……そこで争いのない幸せな国を作ろうじゃないか」


 あの魔剣には弱点がある。

 それは魔族の数が減ることだ。

 魔王を信仰する奴が増えれば増えるほどに力を増す。

 まぁ、信仰なのだから奴にはもう力は無いはずだが、万が一だ。


「そんなことしたら、あなたは今度こそ殺されますよ!?」

「俺に考えがあるんだ、それにまだ助け出せるとは限らないだろ?」

「助け出せたとしてその先にあるのは死ですよ」

「これ以上いると、遅かれ殺されるぞ」


 あの男ならやりかねない、人を見捨てるのにも躊躇いのない男だ。


「ですが……」

「無責任についてこいとは言わん、だが一つだけ言わせてくれ」


 こいつらの意志だ、止めることは出来ない……だから、もしこれで駄目ならどうにも出来ない。


「僕は君や部隊を家族の様に思ってるし、助けられるのなら助けたい……だけど、君達がどう思うかは別問題だ……でも、もし頼ってくれるのなら…………これだけは僕が君たちに出来ることだ」

「隊長……」

「少し考えるといい、僕も準備しておくから……侵攻はいつだ?」

「一週間後です」

「なら、3日後だ……もし、抜ける気ならなるべくそっちで情報を集めておいてくれ……あと、絶対に死ぬなよ……」


 ジュンは頷くとその場から消えた。


「相変わらずお人好しね」

「うーん、まぁ元部隊だし、助けたいじゃない?」

「いいわね、あなたのところは……」

「君だって部隊の子に思い入れはあるだろ?」

「ないわよ、どこも貴方みたいに人望がある訳じゃないの……」


 君も大概人気者だった様な(主に男性に)……。


「まぁ、僕は助けたいと思ったから助けるだけだよ……僕一人で……」


 ベレッタが僕の胸ぐらを掴んだ。










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