第13話 人里

紹介してもらった宿屋で部屋を取り、俺たちは再び街へ繰り出していた。


「いやー、先輩、やっと人里に着きましたね!」


「長かったような短かったような……まぁ短いわな。これで原始人生活卒業だぞ朝倉」


「うう……良かったっす。果物も美味しかったですけど、やっぱ肉食べたいっす肉!」


「しょうがねぇなぁ……なんかうまそうな店あったら寄ってこうぜ」


「先輩、あそこの屋台みたいなところで串焼きみたいの売ってますよ!買ってきます!」


「あっ、おい」


「買ってきました!」


「はえーよ」


「こっち先輩の分っす」


「ありがとな、でも俺の方が少ないのなんで?」


「気のせいっす」


「いや明らかに少な」


「食べましょう、先輩」


「すげー食い意地はってんのな」


「うーん、なんか……肉っすね……」


「あ?なんだその感想」


「食べてみたら分かるっす」


「……うーん、肉だな……」


「もっと美味しいもの食べたいっす」


「市場調査が必要だなこりゃ。調味料やら材料やらで金になる部分があるかもしれん」


「まだ原始人生活を脱却したと思ったら、文明人生活の道のりは遠いかもしれないっすね……」


「まぁ今日は雨露がしのげるまともな部屋で寝れるようになっただけで良しとしようぜ。まだ数日も経ってないしよ」


「それもそっすね」


「食生活と仕事探しとやる事沢山あるぞ」


「でも先輩は職業農民じゃないっすか。なんか栽培すればよくないっすか?」


「冒険者としてなんか魔王倒したりとかできねーかな」


「いやー、走るだけでヘロヘロになる先輩にはちょっと難しいかと思うんすけど」


「お前が敵を倒す係で、俺が水やりする係とかじゃダメか?」


「んふっ、やめてくださいよ先輩ちょっと妙なタイミングでそういう事言うの。笑っちゃったじゃないっすか」


「お前が魔王との戦いでピンチになったりしたら俺が水やりするからさ」


「んふふ、水やりしてどーすんですか」


「朝倉、あとは任せろ、この魔王には俺が水やりする!!!!」


「んふふふふ。ちょっとシリアスな戦いの最中に突然魔王に水やりしてる先輩を想像しちゃったじゃないっすか」


「まぁ魔王を倒すのは朝倉に任せておくとして」


「えー、アタシが倒すんすか魔王」


「見つけたら倒したらいいだろ」


「そんな道端に落ちてる石ころみたいには居ないと思うんですけど」


「それはそれとして、生活費を稼がないといけないからな、なんか考えねーとよ」


「どうしましょうね先輩、モンスター倒したり作物育てたりしましょうよ」


「そうだなぁ、ま、今日はゆっくり寝てから考えようぜ」


「そっすね」


そんな事を話しながら、俺たちは宿屋へ戻り、夜を明かした。

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