第02話 友好種族


「とりあえず、まずは何か食いもんと水を探そうぜ」


「賛成っす」


森の中を探索する事しばらく、俺たちは果実のなる木を見つけた。


「なぁ朝倉、これって食えると思うか?」


「わかんないっす」


「だよなぁ」


「うーん、もしかしたら先輩、『鑑定』とか念じたら鑑定出来るんじゃないっすかね」


「は?そんな事あるわけ……あったわ。とりあえず食えるっぽいな」


「良かったっすね。食料確保っす」


「いや鑑定って何」


「アタシも知らないっす」


「俺だってそうだよ」


「なんか他にも出来る事あるかもしれないっすね。先輩はなんか特殊なスキルとか持ってないんすか?」


「は?あるわけねーだろ農民だぞ俺は。そんなスキルがあるわけ……あったわ」


「なんであるんすか」


「俺が訊きてーよそんな事。なんであんだよ農民のスキルがよ」


「農民の先輩は何が出来るんすか」


「……水やり」


「え?」


「だから水やりスキルだよ。そう書いてある。」


「水やりなんかしてどーすんですか」


「は?言葉に気を付けろよ。俺は水やりができるんだが?」


「んふっ……ちょっと笑わせないでくださいよ先輩」


「んでお前は何ができるんだ?」


「ちょっと待ってくださいね……スキル、スキルっと……おー念じると頭の中に浮かんでくるんですね。勇者はえーっと、勇者斬りが出来ます」


「は?馬鹿にしてんのか?」


「いやいやいやいや、違うんすよ。なんか『スラッシュ』とかいうスキルがあるんすよ。それがどうやらなんか斬撃をするスキルっぽいんですよ」


「ほーん、じゃあさっきの緑の人の頭を割れたザクロみたいにしたのは何ていうスキルなんだ?」


「あれは普通に殴っただけっす」


「その方がこえーよ」


「まぁとっさの事だったんで。いやー、それにしてもあれはビックリしたっすねー。次に出会ったら先輩に勇者切りを見せてあげますよ」


「おいおい、そんな事言ってると本当に来るぞゴブリン」


「いや、まさか森の中とはいえ流石にそうそう遭遇したりは……しましたね先輩」


「お前が変な事言うからだぞ」


「ひどい濡れ衣っす」


「ゴブリンは一匹見つけたらニ十匹はいると思えって言うしな」


「誰が言ってんすかそんな事」


「いいから、仲間が集まってきたりする前に見せてくれよ、勇者斬りとやらを」


「しょーがないっすね」


朝倉はそう言うと、ゴブリンへと向き直った。腰を落として居合のような構えで身をよじる。瞬間、空気が変わる。朝倉の全身が闘気を纏い、抜き放たれるのを今かと待つ手刀が雷を帯び、零れた静電気が小さく何度か弾ける音がした。ゴブリンが朝倉に飛びかかる。朝倉は小さく呟いた。


「スラッシュ」


辺りは轟音に包まれた。

目の前に広がるのは、消し炭になったモンスターと、無惨に破壊された森だった。俺は思う。


「これボスとかに使う技なんじゃねーの」


「これが勇者斬りっす」


「嘘つけ、こっそり『スラッシュ』って言ってただろ」


「勇者斬りっす」


「音に釣られてモンスターが来たりすると面倒だから、まずはここから離れるか」


「了解っす」

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