23.支援役ロベル 王国を完全防衛する



「『支援役』ロベル・モリスは、ここに宣言する!」



俺はこぶしを握ると、天に向かって突き上げる。



「『ワンズ王国』の完全防衛を、全力で支援する、と!」




「お兄様! あたしもいっしょに戦うよ!」



「わたしにも、お手伝いさせてください!」



「もちろん、私も」



「ありがとう、サミー! アンリ! トウナ! みんなの力があれば百人力だ!」



よし! まずは敵編成の確認だ。



「スピード特化型レッサー・デーモンの空中部隊が2,000。スピード特化型スカル・ナイトの地上部隊が3,000ってとこか。どっちもBランク・モンスターだな」



「お兄様のおかげで強くなったもん! Bランク・モンスターなんかに負けられないよ!」



「とはいえ、相手の数は5,000です。しっかりした作戦が必要でしょう」



「主様、ご指示を」



「ああ! 俺にまかせてくれ!」



とはいえ、ここは慎重にいこう。久しぶりのパーティー戦だからな!



「敵部隊の接近まで時間がない! 急いで準備するぞ! サミー! アンリ! トウナ! 全員さっきのドロップ・アイテム、プラチナメタル・ブレスレットを装備してくれ!」



「オッケー!」



「はい!」



「了解」



「これでバリアが得られる! だいたいの攻撃は無効化できるはずだ!」



言いながら、俺は頭を働かせる。ブレスレットはあくまでも保険だ。今の戦力で、戦術を組み立てるならば。



「シンプルに先手必勝で一網打尽だ! 戦闘が長引けば長引くほど、王国民の不安は増す。それなら一気にケリをつける! 今の俺たちならできる!」



そう。



無謀に思える戦術も、実行できる戦力があれば無謀ではなくなるのだ。



となれば!



「みんな! 手に入れたスキルポイントを使って、広範囲攻撃できる神聖魔法の取得をたのむ!」



「オッケー! って、わわっ! 魔法がぜんぶ覚えられちゃう! どれを選べばいいのか迷っちゃうー!」



「あなた様! 『一括取得』を使ってよろしいですか?」



「そのコマンドはダメだアンリ! メッチャ時間がかかるから、取得完了が接敵に間に合わないかもしれない! ちなみに俺だと10分かかった!」



「なるほど! さすがはあなた様です! それでは急いで選びますね!」



「主様は的確。タイム・ラグが出るとは気づかなかった」



「これでも経験者だからな!」



次に戦力を増やす! 召喚モンスターの出番だ!



「コール、ドラゴン・タイラント! コール、フェニックス!」



俺の号令で。




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




暴君龍と不死鳥が出現した!



「ウソ!? これってまさか、ドラゴン・タイラントとフェニックス!? お兄様、こんなモンスターまで仲間にしてるの! ビックリしちゃう!」



「伝説のSSSランク・モンスター。あなた様だからこそ、その力を扱えるのですね」



「主様の可能性は無限大」



「たまたまさ! たまたま運がよかっただけだよ!」



よし! あとは支援スキルだな!




「『超高速詠唱』で、スキル使用スピードアップ!」



からの。



「『オーバー・ロール』で、支援スキルの効果をパーティー全体へ!」



からの。



「『フレイム・ウイングス』で、炎属性攻撃威力を超上昇!」



からの。



「『セイント・バラード』で、神聖属性攻撃威力を超上昇!」



からの。



「『グレート・スプレッド』で、攻撃範囲を超拡大!」




「おおーーーーー! お兄様の支援スキルで力がみなぎってくるーーー!」



「あたたかくて頼もしい力……これが、あなた様の支援なのですね!」



「すごい。勇者パーティーにいた頃とは、比べ物にならない力」



「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」



3人と2体、支援は行き届いたな! よし! 一気に行くぞ!



「まずは空中のレッサー・デーモン部隊を、召喚モンスターで叩く! 広範囲攻撃で速攻だ!」




「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」




接近してくる空中部隊! 射程内に入った! 今だ!



「頼むぞドラゴン・タイラント! レッサー・デーモンの群れに灼熱の炎だ!」



「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」




ドラゴン・タイラントの口から、支援で強化された灼熱の炎が吐き出される!




ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!




レッサー・デーモン1,000体が、一瞬で蒸発する!




「次だ! フェニックス! 残ったレッサー・デーモンの集団に聖なる炎を!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」



フェニックスの全身から、支援強化つきの光り輝く炎が放たれた!




ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ギョワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!




残りのレッサー・デーモン1,000体が、一撃で消滅した!



「空中部隊は片付いたな! あとは地上部隊のスカル・ナイトだ!」



「お兄様! あたしの準備はオッケーだよ!」



「地上の敵はおまかせください!」



「主様のお役に立ってみせる」



支援スキル『セイント・バラード』の効果で、3人の体からは輝くオーラがあふれている! これならいける! 




「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」




地上部隊が押し寄せてきた!



「ここだ! 頼むぞみんな!」



「うん! まずはあたしから! いっくぞおおおおおおお! セイクリッドォォォォ・サンライトォォォォォォォォ!」



サミーの体と『太陽のペンダント』から、オレンジ色の光が放出される!




カアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ヌグガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!




1,000体のスカル・ナイトが、光に巻き込まれ消えていく!




「次はわたしです! はああああ! ジャスティス・ホーリーライト!」



アンリの体と『光のペンダント』からも、白い光がほとばしった!




パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ゴゲガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」




バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!




1,000体のスカル・ナイトは、光とともに崩れた!




「最後は私。ディバイン・ムーンライト」



トウナの全身と『月のペンダント』から、金色の光が放たれる!




ブアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「ウガグアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」



バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!




残る1,000体のスカル・ナイトも、光を受けて消滅した!



「やったぁぁ! お兄様の支援スキルで全滅だぁぁぁ!」



「あなた様のお力のおかげで、地上部隊も撃破ですね!」 



「主様感謝。これで終わり?」



「いや、まだだ!」



スカル・ナイトの群れが消し飛び、クリアになった前方にいたのは。




「まままままさか!? これはいったいどうしたことなのだぁぁぁぁぁ!?」




ひとりの顔色の悪い、やせ細った男だった。もちろん気配は魔族のものだ。



「こいつが司令塔、ってわけか」



「なぜこの暗黒召喚士クラムが、人間ごときに追い込まれているのだ!? なぜ我の奇襲が読まれる!? なぜこれだけの大群が一瞬で倒される!? 5,000もの数を呼び寄せたのだぞ!? なぜ!? なぜ!? なぜええええええええぇぇぇぇぇ!?」



魔族はひとりで勝手に慌てふためいている。敵を前にして棒立ち。スキだらけにもほどがある。



「あんたの戦略よりも、こっちの戦術が上だった。それだけさ!」



俺はショート・ソードを抜き、魔族に突撃する! 



感覚でわかった。



「力の差は圧倒的だ! これ以上支援スキルを使うまでもない! こいつは俺にまかせてくれ!」



ショート・ソードの一撃が、魔族をぶった斬る!




ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「うぎゃあああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」



魔族の体は真っ二つとなり、あっけなく消滅していった。



「これにて決着! チームワークで完全勝利、ってとこだな!」



パーティー初陣、成果は文句なし!



「『ワンズ王国』防衛成功! 任務完了だ!」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る