3.支援役ロベル Sランク・モンスターをカンタンに倒す

「もしかして俺……なんかすごいこと、やっちゃったかな……?」




俺はしばらく、その場でポカーンとしていた。



「100レベルアップ……。まさか、ホントにプラチナメタルゴブリンを呼び出せるとはなぁ」



念のため、ステータス画面を開いて確認してみる。




『名前:ロベル・モリス』



『レベル:144』



『HP:1,444』



『MP:7,789』



『攻撃力:673』



『物理防御:706』



『魔法防御:1,405』



『素早さ:684』



『知力:1,541』




「何かのまちがいじゃなさそうだ。ステータスも、びっくりするぐらい爆上がりしてるぞ」



確か少し前、『レベル19』時点のステータスはこんな感じだったはずだ。




『HP:108』



『MP:777』



『攻撃力:60』



『物理防御:65』



『魔法防御:99』



『素早さ:63』



『知力:132』




「もしかして俺、メチャクチャ使える能力を手に入れちゃった?」



うーーーーーん、いまだに信じられない。でも俺のレベルとステータスが爆上がりしたのは、まちがいなく事実なわけだし。



「人生、何が起こるかわからないもんだなぁ。いきなりすぎて感情が追いついてこないよ……ははは」



とはいえ、だ。



「ホントに強くなったのかどうかは、実戦で試したほうがいいな」



ステータス画面を信用しないわけじゃないけど、念のための確認は必要だろう。いくらレベルが上がっても、慎重な性格ばかりはカンタンに変わらないようだ。



俺は『エンカウント操作』を使い、『出現率:インスタント』に設定する。




『種類・数・瞬殺するか? を選んでください』




「最初から、強いモンスターと戦ってみるか?」



……いや。



「ここは慎重にいこう。いきなり手に入った力に体がついていかない可能性は、ゼロじゃないはずだ」



そうだな。まずは、戦ったことがあるモンスターを呼び出してみるか。



「種類はスケルトン、数は1体、瞬殺するか? はノーで」



俺が宣言した瞬間。




「ガアアアアアアアアアアア!」




目の前に、スケルトンが1体現れた。さっきのプラチナメタルゴブリンみたいに、いきなりはじけ飛ぶことはない。



「『瞬殺するか?』をノーにすると、普通に戦闘できるってわけだな」



と、いうことは。



「『瞬殺するか?』の選択をミスると、大変なことになるな……気をつけよ」




「ガアアアアアアアアアアア!」




ブゥン!




「おっと」



スケルトンの剣を、俺は余裕でかわした。すかさずショートソードを抜き、水平に振るう。




ズバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




「グアアア!? ウゴオオオオオオオオオオオオオオ……」




まったく力を入れていないにもかかわらず。スケルトンの体は真っ二つに切り抜かれ、消滅していった。




『100の経験値を手に入れました』



『100のスキルポイントを手に入れました』




「まちがいなさそうだな。スピードも力も、ケタ違いに上がってる」



それならば。俺はもう一度『エンカウント操作』を使用、『出現率:インスタント』に設定。




『種類・数・瞬殺するか? を選んでください』




「種類はマスター・ゴーレム、数は1体、瞬殺するか? はノーで」



すると。




「ガオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




現れたのは、全身金属製のゴーレムだ。レベル50の冒険者が束になって、ようやく倒せると言われるレベルの実力者。いわゆる、Sランク・モンスター。



だけど。俺には感覚でわかった。




「力の差は圧倒的だ。支援スキルを使うまでもない」




「ガオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




ブゥン!




「遅すぎる」



俺はマスター・ゴーレムのパンチを軽くかわした。そのままヤツに突進すると、ショートソードを胴体に突き立てる。




ドズウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウッ!




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?」




ショートソードは、マスター・ゴーレムの体にカンタンに突き刺さった。カタいはずの金属ボディが、まるでオレンジみたいにやわらかく感じた。




「グオ、グオオオオオオオオオオオオオオォォォォ……」




マスター・ゴーレムの声に力がなくなると、全身にピシピシとヒビが入り。




ドォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!




コナゴナになって爆発した。




『10,000の経験値を手に入れました』



『10,000のスキルポイントを手に入れました』




あまりにもあっけない決着。にもかかわらず、俺の消耗はゼロ。




「よし、これで自信が持てた! Sランク・モンスターに勝てるなら、これから俺を雇ってくれるパーティーもあるはずだ! 支援の幅も大きく広がるはず……って」



ちょっと待て。そういえば。気がついてしまった。



「戦闘が楽勝すぎたから、支援スキルをぜんぜん試してないぞ!」



いけないいけない、完全にうっかりしてた。調子に乗っちゃダメだよな。



「あくまで俺は『支援役』! 『支援役』の仕事は、パーティーが望む支援をすることだからな!」



よし! 



「あらためて、支援スキルの効果を確認してみよう!」



さて、まずはどれを試してみるべきか。



「やっぱり最初は、基本的なスキルがいいだろうな」



今の俺の目的は『ワンズ王国』へ向かうこと。ここから徒歩だと、2日はかかるはず。



そうだ!



「スキルの力でどれだけ時間短縮できるか、試すのはアリかもしれない」



となると、コレか。



「『スピード・アップ』で速度上昇!」



宣言と同時に、体がフワッと軽くなる。



「すごいな! これまでの『スピード・アップ』の10倍……いや! 20倍以上のスピードで動けてる! それなのに、制御はバッチリ効く!」



レベルアップの影響で、支援スキルの効果も大幅に上がったみたいだ。



「よし! ついでにこいつも試してみるか」



俺はメニュー画面を開き。



「スキル『エンカウント操作』使用! 『出現率:ゼロ』に設定!」



『チート覚醒』の片割れをセッティングした。こっちも実験してみないとな。




『エンカウント率が ゼロ に設定されました』




「準備オッケーだ! いざ『ワンズ王国』へ!」



超スピード状態の俺は足取りも軽く、王国へ向けて歩き出したのだった。






    □    □    □






王国が見えてきたのは、2時間後だった。



「メチャメチャ早く着いたなぁ。徒歩で2日かかるって聞いてたんだけどなぁ」



レベル144で使う、『スピード・アップ』の効果は圧倒的だった。持続時間も申し分なし。



「しかも、ザコ・モンスターとのエンカウントは一度もなかった! 『エンカウント操作』の『出現率:ゼロ』も、バッチリ機能してるみたいだぞ!」



『支援役』としての自信と手ごたえが、どんどんあふれてくるのを感じる。



「これだけいろいろできれば、どこかのパーティーが雇ってくれるだろう――」




「きゃーーーーーーーっ!」




突然、あたりに女の子の悲鳴が響いた。声が聞こえた方を見ると。




「誰か! 誰か助けてえ!」




女の子が、2人の男に追われている!




「いやあああああああっ!」




「なんだ? とにかく助けないと!」

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