ロマン・エイジⅣ プロローグ

 起床ラッパの音色が響く。軍隊の一日が始まりを告げる。


 そこはグラーセン王国参謀本部の宿舎。ここで多くの将兵が寝泊まりをし、戦友と寝食を共にする。


 そんな宿舎の一室。簡素な部屋に置かれたベッドの上で、彼女は目を覚ました。


 ベッドの上で一回伸びをする。大きく深呼吸をして、意識を覚醒させる。


 そうして、ユリカ・フォン・ハルトブルクはベッドから起き上がった。


 もう聞き慣れてしまったラッパの音色。今ではラッパがなくても体が勝手に起きるようになっていた。


 元々目を覚ますのは苦手な方だったのだが、軍での生活をする内に、すっかり体内時計は軍の仕様になってしまった。


 彼女はそのまま起き上がり、すぐに身支度を整えた。紺青色の衣服に長いスカート。それから特徴的な長い金髪を櫛で整える。最後に一回顔を洗って鏡を見る。


 そうして見慣れた自分の顔を見ることで、彼女の一日は始まる。


 いつもと変わらぬ自分の顔。問題ないことを確認して、彼女は今日の日程に思考を切り替える。


 その刹那、彼女は自分の相棒のことを思い出す。


 無表情・不愛想・無感情。三拍子揃った気難しい彼女の相棒は、今日はどんな顔をしているのだろうか? 今日はどんな悪戯をしてやろうか?


 そんなことを考えていると、彼女は自然と笑みを浮かべるのだった。

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