勢力解説:北方人

 人間種。元々は北海の彼方に住んでいたとされる民族。

アルティピア帝国を滅ぼした民族として有名。ノルド人とも。

アルティピア大陸各地に定住、同化したものも多かったが、ある程度の勢力を形成したものとしてはかつてのニオシア地域に定着したニオサ人が代表的である。


 多くの北方人は戦いの中の死を望む。

戦いの中で倒れた戦士は彼らの信仰における主神、隻眼の全能神の御許へ逝く資格を得るという。

いわゆる戦闘民族であり、彼らの遺した叙事詩は戦いのことを歌ったものが多い。


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 元々ニオシア等の北岸地域で小規模な略奪行為を働くものがあり、海賊としての悪名は局地的にのみ知られていた。

竜族南進後の帝国末期には次第に大陸全土の沿岸部で略奪と襲撃を繰り返すようになり、次第に各地で略奪者の代名詞として大いに恐れられるようになった。

末期の帝国軍には、もはや神出鬼没な北方人海賊の襲撃に即応する力は残されてはいなかった。


 海賊被害への警句となる伝承や物語はアルティピアの各地に残されている。

水路、特に地中海を経由した物品輸送経路は帝国経済のいわば大動脈とも言えるものであったが、

地中海にも北方人海賊が出没するようになるとその安全な利用は不可能となった。

必然的に物品輸送は陸路に頼らざるを得なくなり、帝国の経済はさらに縮小することになった。


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 後年には強力な族長、ハーラル・ゴーメスンが大北方軍を率いてニオシアに上陸、弱体化しきった西方帝国軍を蹴散らしながら西方帝都キューゴを目指して南下した。

道中、通りがかる全ての街や村を焼き払い略奪しつくしたことから彼らは「エターナルの厄災」と呼ばれ恐怖の象徴となった。

帝都を守る近衛軍の激しい抵抗を受けながらも、最終的に彼らはキューゴに入城、やはり街を焼き払い徹底的な蛮行の限りを尽くした。

この時、族長ゴーメスンが時の皇帝スタライウスの尻を犯したという伝説が残っているほどである。

こうして西方皇帝位は消滅、共和政キューゴから連綿と続いてきた人間の帝国は、同じ人間の手によってあまりに呆気ない終わりを迎えたのであった。

竜族が帝国滅亡のきっかけを作ったとすれば、トドメを刺したのは彼ら北方人であると言えよう。


 もっとも、当時の西方帝国は北方軍の上陸前からすでに皇帝ペラゴナスンの暴政によって破綻の危機に陥っており、

北方人が攻め込んでこなかったとしてもじきに何かしらの形で破滅を迎えていたと考えられる。

ちなみに、最後の皇帝スタライウスは大北方軍の接近にいよいよ危機感を持ってペラゴナスンを暗殺した近衛軍に立てられた傀儡皇帝であった。


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 こうして大勢力をもって西方帝国を滅亡させた北方人だが、戦勝を祝う宴会で族長ゴーメスンが急死すると大北方軍のまとまりは急速に瓦解、

これまでキューゴを目指してきた北方人たちの目的地は再びバラバラになった。

あるものはニオシアに定住しニオサ人となり、あるものは東方地域に入植し同化、またあるものは再び北海へと旅立った。

アルティピアへの定住を選んだものの多くは現地人と同化し、やがて北方人としてのアイデンティティを失っていった。

 帝国末期に電光のごとく現れたこの民族は、こうしてアルティピアの歴史に溶け込む形で再び急速に消えていったのであった。

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