第12話 魔王コスが可愛い



 俺の家に花梨ちゃんが来て一週間。魔王イリスティラは、たまに一人で遊びに行ったり、バイトも一人でこなせるようになった。ただ、幼児体型なので迷子になるから遠くに行かないように言っておいた。


 花梨ちゃんとイリスティラには、俺の家の合鍵を渡してあるので、自由に出入りが可能だ。


 しかし、布団も奮発して買ったので、俺の財布はカツカツの状態になってしまった。


 幸い、花梨ちゃんが生活費を入れてくれるというので、とても助かっている。


 俺は大学生なので、バイトの時給は800円程度に過ぎない。でも、幼児体型のイリスティラの方が時給が1000円と高いのは納得いかない。何故だ?


 しかも、イリスティラの方がバイトに行っている時間が長いので、イリスティラの方が俺よりも稼いでいるんだ。


 イリスティラは、バイト代が入ったら、俺を養ってくれるって言ってたけど、それは時給からして流石に無理だろう。無理だよな?魔王の紐なんて嫌だぞ?


 イリスティラが、分かってて言ってるのかは謎だ。


 花梨ちゃんと同棲を始めて、俺達は大学では恋人として過ごすようになった。


 朝には、おはようのキスをして、朝ごはんはイリスの分まで花梨ちゃんが用意してくれる。弁当が必要な時は、俺の分も作ってくれるし、大学までは手を繋いで一緒に登校する。講義も同じ講義に出る時は隣に座って、肩を寄せ合うし……お昼は一緒に食べるし、帰りは待ち合わせて一緒に帰る。俺が夢見ていた花梨ちゃんとの恋人生活がそこに在った。


 しかし、未だに俺が花梨ちゃんと、すでに結婚しているなんて信じられない。


 それに、無職学生の世帯主って、そりゃ無いだろう?


 俺は、ひとまず結婚していることは横に置いておいて、花梨ちゃんと恋人になる事を選んだ。


 それに……俺は、童貞だ。


 だから、いきなり初夜なんてハードルは、俺には高すぎたのだ。


 イリスティラと言う、もう一人の俺の嫁もいるが、あの幼児体型では間違いが起きる事はあり得ないので安心だ。


 今日は、大学が終わってからバイトが入っているので、バイト先でイリスティラと合流の予定になっている。


 今日の講義も終わり、教室の机で帰りの支度をしていると、俺の隣にいた彼女の花梨ちゃんが俺の横顔を眺めてニヤニヤしていた。


「どうした?花梨。俺の顔に何かついてるか?」


「ううん?私の旦那……彼氏はカッコいいなーって見てたの♡」


 くぅううう!何だ?この幸せは!?リア充は、いつもこんな感じなのか?


「そ、そうか?花梨も可愛いと思うぞ?」


「えへへ♡レモン♪今日はバイトでしょ?」


 花梨ちゃんは、俺の腕に抱き付いてきて……色々と気持ちが良い。


「ああ、今日は遅くなるから夕飯はイリスと取ってくる予定だな」


「ええぇ?今日は、一緒に食べられないの?」


「そうなるかな?……悪いけど」


「そっか……」


 花梨ちゃんは、寂しそうな表情を見せていた。

 

 一緒に食事したい気持ちはあるけど、バイトで遅くなる予定なので……帰る頃には夜遅くなってしまっているんだ。でも、イリスティラは……幼児体型なので、社会的には先に返した方が良いだろう。


「ちょっと、待ってくれ!バイト先で一緒に食べないか?」


「うん!それじゃ一緒に帰りましょ?」


 ふぅ……どうやら、花梨ちゃんの機嫌は直ったようだ。


 そうして俺は、花梨ちゃんを連れてイリスティラの待つバイト先に行く事になった。



◇◇


 

「へぇ……ここが、レモンのバイト先なのね?」 


「ああ、ここの店長が良い人でさ、イリスの面倒を見て貰っているんだ」


 流石に、イリスを働かせている……とは、言えないよな?見た目は、幼女だもんな?


「いらっしゃいなのじゃ!レモンにカリン」


 すると、魔王コスプレをしたイリスティラが接客対応で出て来た。


「あら、イリスちゃん偉いわねぇ?お手伝いしてるの?」


「バイトなのじゃ!」


「ああ!バイトのお手伝いな?ありがとう!イリス♡助かったよ!」


 ふぅ……一応な?お手伝いにしとかないと、俺は幼女を働かせる鬼になってしまう。


「イリス上がれるか?一緒に飯にしよう」


「うむ、食べるのじゃ♡」


 そして、俺達はバイト先で賄いを用意してもらい。一緒に食べることになった。


「なぁ、イリス。その衣装脱がないのか?」


「このままで良いのじゃ」


「可愛いからこのままでいいよ?イリスちゃん」


 イリスティラは、飯を食べているのに、魔王のコスプレのまま……もぐもぐしていた。


 確かに……可愛い。幼児体型に魔王コスは反則だ。魔王の角にゴスロリ魔王は可愛すぎるだろ!?


 バイト中はそんなものかと思っていたけど、今の俺は……まだバイトに入っていない。


「はぁ……それじゃ俺はこれから仕事になるから、花梨?イリスを家まで連れて帰ってくれないか?」


「ええ、分かったわ。イリスちゃん?一緒に帰りましょ?その服は着て行くの?」


 ふぅ……イリスティラを花梨ちゃんに預けて、俺はこれからカウンターに入って仕事だ。


「うむ、レモンよ家で待っておるぞ?」


「おう!待っててくれ♡」


 今日の俺のシフトは、午後六時から九時までの三時間だ。たったの三時間だけど馬鹿には出来ない。俺には金が無いのだから。


「魔王様!お疲れさまでした!着て帰られますか?気にいったのならば良いですよ?予備は何着でもあります!はい!」


「うむ、では……遠慮なく着て帰るぞ?」


 マジでイリスティラは、魔王の衣装のまま帰るみたいだ。大丈夫か?


 そして、花梨ちゃんとイリスティラは家に帰り、俺は時間いっぱいまで、店長に働かされてから家に帰った。


 働かされてと言ったが、俺は自主的にバイトをしているのだが、店長は俺に対して当たりが強い。あれか?四天王だとか言ってたから、俺に倒されてその仕返しのつもりかもしれないが、俺は店長にビシビシと良く鞭で叩かれる。


 なので、働かされている感覚になってしまう……という事だ。


 家に着くとイリスティラは、まだ魔王のコスプレをしたままだった。


 え?ずっと……そのままでいる気か?


「なんじゃ?レモン♡この服、可愛いじゃろ?我はこれからは、この服でいくぞ?」


「そんなに、気にいったのか?俺も、確かに可愛いと思ったよ……」


「そうじゃろぅ?レモンもこれで我にメロメロなのじゃ♡」


 まさかと思うけど……ずっと、そのままでいる気か!?イリスティラ!?


 そして、この日から……イリスティラの通常の服が魔王コスに変わってしまったのだった。







読者様へ


ここまでお読みいただきありがとうございます。

レビュー☆☆☆にコメント、応援♡を頂けたらとても嬉しいです。


こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。


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