異世界から帰ってきたら魔王を拾ったんだけどどうしたらいい?

蒼真 咲

第1話 魔王を拾った。



 俺は元勇者、「夕切レモン」20歳、しがない大学生だ。異世界アプテシアでは、レイモンドという名前で勇者をやっていた。


 そして仲間を集めて、やっとのことで魔王イリスティラを倒してこっちの世界に帰ってこれたのがここ最近の事。


 帰って来たんだけど……。


「レイモンド……めし」


 何故か今、俺の横には……俺が倒したはずの魔王イリスティラが幼女の姿で俺の服の裾をちょんと掴んで佇んでいた。


「はぁ………………」


 なんで勇者の俺が魔王の世話をしなければならないんだ?


「はらへった……おい、レイモンド?」


「分かった分かった……めしな?」


「よきにはからえ」


 今月も厳しいけど……ラーメンでも食うか?


「よし、ラーメン食うぞ!」


「おー!ラーメンは良いものじゃ」


 どうしてこうなったかというと……三か月前に遡る。 



◇◇



 ――三か月前。


 魔大陸の魔王城へとたどり着いた俺達勇者パーティは、最後の戦いへと挑んでいた。


 ラスボスの魔王との戦いだ。


「魔王イリスティラ!これでお終いだ!」


「ぐははは!その程度の攻撃効くわけが……なにぃ!」


「魔王の防御結界は無効にしたわ!今よ!」

「ありがとう!サナ!いくぞ!魔王!」


「まさか……この魔王が敗れるなど……ぬおおおおおおおおお!!!」


「今だ!止めを!」


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 俺は魔法力を全て聖剣に送り込み、全力をかけて魔王に切り込んだ。


「勇者よ……この……責任は取って貰うぞ……」


「何を言う、お前を倒したら俺は元の世界に帰るんだ!」


「よかろう……首を洗って……待っておるがよい……ぐは!ぐあぁぁぁぁ!!」


 そうして魔王は敗れ去り、俺は自分の世界へ戻ることが出来た。


 最後に魔王が残した言葉が何なのかが分からなかったんだけど……。


 こっちの世界に戻ったその日、俺は自分の部屋にいる幼女を拾った。



◇◇



 俺が異世界から帰ったその日、久しぶりに家に帰ったんだ。そうしたら銀髪の日に焼けた色黒の布地の少ない服を着た知らない女の子が、俺の部屋で大の字になって「くかー」って寝ていたんだ。


「って誰!?」


「なんじゃ……うるさい」


「……お前はなんだ?何故俺の家にいる?」


「だから、言ったであろう?責任は取って貰うと……もちっとねる」


 そう言うと女の子は、また寝てしまった。


「はぁ?何?責任!?」


「お主が……きのう、はげしく……するから……我は、つかれておる……」


 はぁ?我って誰よ?激しくって?俺なにもして無いよ!?


 そもそも俺が異世界からここに帰って来たのは、たった今だ。


 昨晩といったら、俺が魔王と戦っている時しかない。


 こんな少女と激しく……なんてするわけがない。


「そうじゃ……レイモンド……はらへった」


「腹減ったって……え?レイモンド?」


 レイモンドは、俺が異世界で名乗っていた名前だ。なぜこいつが俺の異世界での名前を知っている?


「……お前は誰だ?」


「……まだ、わからんか?我は魔王イリスティラじゃ」


「って魔王!生きていたのか!?」


「まさか……お主にきのうやられたので力はもうないわ」


「それじゃ、あの時の責任って?」


「我をたおした、責任はとってもらう。我は行くところがない……」


「俺が、面倒を見ろと?」 


「おなかすいた……ん……レイモンド?」


 魔王イリスティアの可愛い赤い瞳がウルウルと涙を貯めていた。 

 あざとい!魔王イリスティラが、くそ可愛すぎて俺には逆らえなかった。

 

「分かったから、待ってろ?」


 俺は近くのコンビニで適当に、ジュースとおにぎりやお菓子を購入して帰ってくると、魔王イリスティラに食べさせてやった。


「うまい!これはなんじゃ?」


「これは、鮭のおにぎりで、こっちはポテチ……芋を油で揚げたお菓子だ」


 魔王イリスティラは、ペットボトルのジュースをゴクゴクと飲みながらおにぎりを平らげて行った。 


 はぁ……バイト増やさないとなぁ……これなら異世界から帰ってくるんじゃなかった、と俺は思うのだった。





読者様へ

ここまでお読みいただきありがとうございます。

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こちらは暇な時にゆっくり投稿予定です。 まったり進みます。

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