継承は終わっていた


 山田さん曰く、じいじいの形見が存在すると言う。


 その形見の確認をしてもらいたいと言うのだ。



 「持ってきていただければ、いくらでも確認しますよ」



 新手の詐欺の可能性もあるし、極力相手の土俵には上がりたくない。


 俺はただひたすら「自分のペース」へ持って行く事に必死だった。


 

 「そうして差し上げたいのですが、簡単に持ち運べるものでは無いんです」



 もうこの時は別のスイッチが入ってしまった。


 俺、ムカちゃったんです何でか。



 「あのさ、こんな訳わかんない状態でハイそうですかじゃあ伺いますなんてならないだろうよ、笑ってやるから目的言ってみろよ」



 俺は電話を切った後、警察に相談する気マンマンだった。


 

 「敬重さんの形見とは昔から継承され続けているもので、その後継者が海人さんに当たるとしかお伝え出来ない事をご理解いただきたい」



 う さ ん く さ い 。


 絶対に怪しいヤツ。


 どこの誰が聞いても、こんな話に乗るバカはいないと思う。


 所が、状況が一変する内容を突き付けられた。



 「海人さんのアドレスに、メールにて写真を送らせていただきました」



 アドレス?


 メールって、メールアドレスだよな??


 待ってくれよ、ホントに怖いよ何で知ってんだよ・・・


 と、この時は既に冷静でいられなくなっていた。



 「その写真に見覚えがあると思います」



 山田さんは話を続ける。



 「それは絶対にあなた方しか知らない物であるはずですし、形見をお見せする為に必要な物です」



 確認してくれと言われた俺は、確認後掛けなおすと言って電話を切った。


 このままシカトしてやろうかとも考えた。


 だが、色々と困惑しているのも事実であったし、心情を整理する為にもその写真とやらを確認する事にした。


 事実、我々しか知らない物がそこに写っていた。




 俺の家の道具箱の中に、昔から変な物が入っていた。


 家紋のような金属でできた大きめのメダルのような物。


 昔からあるには不自然で、塩化ビニール? のような物でパッケージされ封印されている。


 開ける事をそもそも目的としていないような完全なる封印だ。


 パッケージの表面は透明な生地で、裏はピンク。


 何が不自然かと言うと、コレは昭和の時代から我が家の道具箱に不思議と入っており、その時代の庶民がこんな綺麗にこんな素材でパッケージを作れるとは思えない。


 絶対に、技術者が作ったであろうことは間違いない。


 何故そんな物が道具箱に入っているのか。


 半分文房具入れと化している道具箱に入っている為、文鎮か何かだと思っていた。


 が、どうやら違うらしい。


 これが何なのか、事後である今も解らないのだが、山田さん曰く「形見を見る為に必要な物」であるらしい。


 コレの存在は俺の母は知っているが、恐らく叔母さんやいとこたちは知らないであろう。


 何なら、多分だが、俺の姉貴も知らないと思う。


 あの雨の日もそうだが、直感で、詐欺で無い事が解った。


 いや、もし詐欺であってもよくここまで調べたと褒めてやりたい。


 もう引っかかってやっても構わないと思った。


 こんな決定的な突きつけ方、完敗だった。


 俺の友達は聞いた事があると思う。


 「俺の家に、三波家か石川家か解らないけど、家紋みたいなのがあるんだ」


 と言っているのを。


 見せた事のある友達もいる。


 どうやらアレは、ソレだったらしいです。


 そしてそれと同じようなものが、もう一つある事に気が付いた。




 写真に写っている「家紋のようなメダル」は、俺が持っているものと同じパッケージではなかったから。

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