Report25. 国崩のガーレン
ビル20階の高さから飛び降りたガーレンは、大きな声で笑いながら一直線に地面に向かって落下し続ける。
そして、その着地の瞬間。
ドゴオオォーーーーーーン!!!!
凄まじいまでの衝突音が戦場に轟く。
その着地の衝撃に大地は抉れ、めくり上がり、周囲にいたディストリア兵諸共吹っ飛ばした。
少し離れた位置にいた、イサミたち遊撃隊の元にもその衝撃の波が届いており、空気がビリビリと震えた。
「まさか
ソニアは、苦々しく呟いた。
「国崩?ソニア、あいつは一体なんなんだ?全長は約4m…とても人間とは思えないほどのデカさだな。」
イサミは、今しがた落ちてきた人物について冷静に分析をしながら尋ねる。
「あやつは五龍星の一人、ガーレン・グランベリル。常に戦に飢えてる戦闘狂じゃ。
国崩という名前の由来は、かつて奴一人の手によってひとつの国が滅んだことから来ている。単純な力だけで言ったら、あやつが五龍星の中でナンバーワンじゃろう。非常に危険な男じゃ…」
「なるほど。国を一人で滅ぼす程の力を持った男という訳か……野放しにしておく訳にはいかないな。」
そう言うなり、イサミはガーレンの落下場所へ全速力で向かっていくのであった。
「ちょ…ちょっと!イサミさん!?一体どこへ行こうとしてるんスか!」
ラスがイサミを止めようと追っかけたが、イサミは付いてくるなと言わんばかりに首を横に振った。
「あいつは俺が止める!ラスたちは手はず通り、防御魔法を展開する任務にあたってくれ!」
「イサミさーーーーーーん!」
ラスの制止も虚しく、イサミの姿はどんどんと小さくなっていった。
その横にいるソニアは一瞬不安で顔を曇らせながらも、目を閉じ、両手を重ね合わせ祈りを捧げた。
「神よ…我が愛しき者を守り給え。」
ソニアの小さな祈りの声は、戦場で飛び交う怒号にかき消され、誰の耳にも入ることは無いのであった。
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一方でイサミは、既にガーレンの後ろ姿を捉えていた。
ターゲットとの距離、30m。
イサミは腰に挿した鞘から刀を抜き、戦いの準備に入る。
ターゲットとの距離、20m。
向こうはまだ、イサミの存在に気づいていない。
ターゲットとの距離、10m。
イサミは、手にした刀を振りかざす。
ターゲットとの距離、0。
イサミは獲物の首筋を目掛けて、刃を振り下ろした。
しかしーー
その獲物は突如振り向き、大きな雄叫びをあげた。
「うおおおおおおーーーーーーーーーーー!!!!!」
その音圧だけでイサミの身体は後方へと吹っ飛ばされる。
イサミは身体を捻りながらなんとか着地し、再びガーレンに向かって刀を構えた。
「不意打ちとは、卑怯な奴よのう。そんなものでワシの首を取るつもりだったのか?」
ガーレンは不敵にニヤリと笑う。
「ただの挨拶代わりさ。」
イサミも負けじと不敵な笑みを作って見せた。
「お主…名はなんと言う?」
「俺の名はイサミ。この世界を渡り歩くしがない旅人さ。ひょんなことからエルト王国に加担することになってしまったけどな。」
「フン…旅人、か。どうしてそんな嘘を付くのかは知らんが、まあいいだろう。お主からは、強者の匂いがプンプンするわい……最初から全力で行かせてもらう。
すぐに壊れてしまうなよ?イサミとやら。」
ガーレンは両腕を胸の前に出し、ファイティングポーズを取る。
「お前、まさか拳で戦うのか?」
「これがワシの戦い方であるからな。我が拳に纏った
ガーレンは右手に装着した手甲の宝具を愛おしそうに撫でた。
「いいや、ナメている訳ではないさ。少し戦い方を考えていただけさ。」
「フン…考える間など与えんぞ…小僧おおおぉぉ!」
ガーレンは雄叫びとともに、一瞬でイサミとの距離を詰める。
そして、ふた回りほど小さいイサミに向かって、巨大な岩のような重い拳を振り下ろした。
イサミはバックステップを踏み、直撃を回避する。
目標を失った拳は、そのまま地面に突き刺さった。
ドッゴオオォーーーーーーン!!!!
再びの轟音とともに、大地は割れ、衝撃によって砕けた瓦礫が周囲に飛び散る。
「くっ、回避成功率12%……!避けられないか…」
襲いかかる岩の礫を避けたり、刀で叩き落としたりしていたイサミであったが、全てを捌ききることが出来ず、ついに左肩に岩塊がクリーンヒットしてしまうのであった。
「くっ…しまった…。」
岩の直撃にバランスを崩したイサミをガーレンは見逃さなかった。
「次は、外さんぞ。」
ガーレンは悪魔のような笑みを浮かべながら、再びイサミに向かって拳を振り下ろす。
「爆・砕・拳。」
振り下ろされた拳を見ながら、イサミはブツブツと独り言を呟く。
「左肩部に軽度のダメージ。バランス機構の修復時間、約0.8秒。敵の攻撃の回避成功率……0%」
ドッカアァーーーーーーン!!!!!
「グワーーーーハッハッハァ!」
三度、轟音が戦場に鳴り響く。
獲物の手応えを感じたガーレンは勝利を確信し、高らかに笑い出すのであった。
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