不思議と不気味の本格異世界!

この作品は珍しく、主人公に対する情報が極端に絞られ、出来事と背景の描写から少しずつわかるようになっています。

実験的幻想小説のように見受けられますが、臨場感ともうしますか、描写される世界の『ここではないどこか』という感触がかなり個性的に感じられます。

テンプレは読みたいけれど、たまには違うモノが読みたい、という気分になったときはお勧めです。
大人の方々は少しアルコールを入れてから読むと、いい感じに効くこと間違いないでしょう。

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(以下は作者先生について思うこと)

文章は上手く、筆力のある作者先生ですからセルアウト(マス向けの転生作品を書くこと)すれば、相当に売れるのではないかと思われますが、ご本人の希望でそういうことはやりたくない、という御仁です。

私としては、和製ファンタジーの復権の為に、この先生の『冬の狼』は書籍化していただきたいと思います。
一昔前の富士見ファンタジア文庫のラノベよりはかなりマシな作品に見えます(先行者としてのスレイヤーズは否定しないですよ、もちろん。)。

ゲーム的な縛りから脱却し、文学作品に片足を突っ込んでいるという状態の作品は『読みたいな』という気分になることは少ないかもしれません。
特に経験が少なく、視野が狭い年代には敷居が高いでしょう。
それでも一部には刺さるんじゃないかなぁ……