-Summer- 結成、目線、疑念-2

 お互い本気で勝負していて、自分が今、どの順位でスコアがどれぐらいなのか…見ている余裕も無かったけれど…


 いいぞっ…!すごい綺麗に光ってる!!いつもより、手の動きも気持ちも…全てが落ち着いていて…!…これは、いけるっ!きっと…翼さんに勝てるっ…!!


 そのまま俺たちは、一心不乱に光るパネルを叩いて行ったんだ…


 ◇ ◇


 曲の終了と共に、俺らの筐体からは《Full combo》の掛け声が流れていた。


 Full combo《フルコンボ》

 光るパネルをどんな形でも、1ちゃんとタッチする事が出来た時に、おめでとう!の意味を込めて、インフォメーションからアナウンスされるんだ。


 ''result…''


「……くそっ……!!」


「…あ、あぶなっ……」


 そう、また負けたんだ…やっぱり翼さんには勝てないよっ…!!


「…傑くん…?」


「…なんですかっ…」


「…スコア、ちゃんと見た…?」


「えっ?」


 負けを確信し、筐体にうなだれる俺は、もう一度スコアに目を向けてみた。

 そこに映し出されたスコアは


《1000000点満点》

 992000、991800


 たった200点で負けたんだ…そう、光るパネルをたった1回…ちゃんと押せただけで俺は、翼さんに勝てたんだ…


「…く、悔しいです…」


 悔しさを滲み出す俺に翼さんは、そこじゃないのにと俺を正してきたんだ。


「…ねぇ傑くん?勝ちたい気持ちは大切だよ?でもね?負けたからって自分を責めずに、ちゃんと自分を称えてあげないとね?」


「えぇっ…」


「いやぁ、正直…と思ったよ?結構…追い詰められてたもんなぁ?」


「翼さん…」


「…ほんっと、上手になったね?傑くんはすっかり…俺のだね?」


 ニコッと微笑みながら話す翼さんの言葉に俺の心は、以前と同じようにギュっと締め付けられる感じを覚えて…


 では無く…憧れの人に事がすごく嬉しかったんだ…!


「…でも、まだまだ負けないけどね?♪」と翼さんは俺の性格を見透かしていて、また火をつけてきやがったんだ。


「絶対…追いついてみせますから…!!」


 その言葉に後ろで見ていた2人も

「…おいお〜い!俺も負けねぇぞ〜っ?」

「あたしも上手くなりたいなぁ…」

 なんて、笑いながら話していたんだけど…


「…愛ちゃんも上手じゃないかっ!俺は、女の子の中で1番伸びしろがあって、上手だと思ってるよ?♪」


 翼さんがニコッと愛に向けた言葉で、愛が照れてる姿を見た時になんでだろう…これがなはずだから、嫌だなんて思っちゃいけないはずなのに…


 心のどこかで…何か引っかかった感じがしたんだ…なんなの…?この気持ち…ちょっと苦しいよ…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る