-Spring- 憧れ、新しい友達-4

 -1ヶ月後


 5月も半ばを迎えていて、春から少しずつ夏への準備を始めていた。


 今日は、初めて聖地に足を踏み入れる日。

 俺は、翼さんの提案通り、3人と待ち合わせをして聖地へと、足を運んでいたんだ。


 この1ヶ月で、また少しjubeatの腕も成長したように感じて、雄介とは肩を並べて、スコアを競えるようにまでなってきていた。


 愛も女の子の中では、かなり上手いレベルで、さすが愛だなっ!とつくづく思っていた。


「いやぁ!もう傑は、俺の良きライバルだよな〜っ!普通に負ける曲もあるしさ〜!!」


「負けたくない気持ちもあるけど、雄介とスコアを競り合うのは、すげぇ楽しいもんな〜♪」


 良き親友で、良きライバル

 ほんとに良い奴すぎて困るぐらいだった。


 翼さんには、やっぱり敵わない…追いつこうとしても、追いつかれまいとどんどん前に進んでいっていて…

 俺のという存在感は、1ミリたりとも変わってはいなかったんだ。


 そして、この1ヶ月の中で俺…いや、は新たに2人の友達とSNSで知り合い、連絡を取り合っていて、今日は聖地で、その2人とも会える予定だ。


 隠さなきゃいけないこともあるけど…いい2人だと嬉しいな…!うん、きっといい人だ!


 そんな新たな友達に会える喜びと、同性愛者という事を隠す罪悪感のようなものに、少し気持ちが複雑になっていたのは確かで…やっぱり…不安なもの不安だったんだよな…


 この後、出会う2人も…これからずっと、長い付き合いになって、俺を支えてくれる存在になるなんてこの時は、これっぽっちも考えてもいなかったから…


 ◇ ◇


 聖地に到着した俺たちは、早速jubeatの元へと向かっていく。


 いつも通っている拠点のゲーセンよりも、フロア内の規模や綺麗さも別格で、まさに【聖地】そのものだった…


 当時、jubeatの人気は壮大なもので、聖地レベルのゲーセンになると、プレイ待ちも数人は必ずいる状態で、そう簡単にプレイすることは出来なかったんだ。


「わぁ…やっぱりすごい人…」

「これは想定内じゃねぇか?」

「なんかあたし…怖いかも…笑」

「ははっ!みんな、そんなに固くならずに!」


(この人の量だと、今日は少ししか、jubeat出来ないんじゃないかな…)


 そんなことを考えていると、俺たちの目の前に、男の子と女の子が姿を現して


「もしかして愛ちゃん?それに傑くん?」

 男の子も女の子の声がけに続けて

「それに雄介さんに翼さんですよね!?」


 そう、この2人がSNSで知り合った友達だ。2人から奇策に声をかけてくれたんだ。


 男の子は結斗ゆいと

 まだ高校生なのにすごくしっかりしていて本当に高校生!?と大人の俺らから見ても間違えてしまうぐらい…

 ちゃんと髪の毛もセットされていて、高校生とわかるのは、どことなく残る幼顔だけ。


 そして女の子はつむぎ

 俺たちと同い年で女子大生だ。

 会った当初からとても絡みやすく、とにかく明るくて、笑神様が紬には、宿っているのではないかという程、何かを持っている子だった。


 俺たちも、軽く自己紹介を行い


「優しそうな4人でよかった♪」


「一番年下ですけど、これからもよろしくお願いします!」


 2人も嬉しそうに俺たちへ返してくれたんだ。いい人そうで…安心したよっ…!


 その後も俺たちは、6人でjubeatのプレイ待ちをしながら、お互いの事を話したんだ。


 -拠点はどこか

 -どんな曲が好きなのか

 -得意な譜面はどれなのか


 実際に、みんなでプレイをしてみると、みんなそれぞれプレイスタイルが違って…


 ''バシバシ叩く系の俺と雄介''


 ''ピアノのように優しい指使いの翼さんと結斗''


 ''手が小さくても技術でカバーする愛と柚''


 趣味から繋がる友達だからこそ、話が共感出来たり、コツを教えあったり出来て…そうだよ、俺…こんな友達が…ずっと欲しかったんだ…あれ、俺さ…?最近ずっと、笑ってる…!



 自分がということをこの仲間たちといる時は、心に仕舞い込むのではなく、として、素で楽しむ事が出来ていたんだ…


 今の俺…俺自身がすごく楽しい…

 これが、俺らしさなのかもしれない…!

 ほんと…嬉しいな…っ!

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