-Spring- 憧れ、新しい友達-1

 jubeatに出会ってから2ヶ月が経ち、季節も暖かい春を迎えていて、車の運転も楽な時期へと変わっていた。


 俺は、仕事終わりや休みの日も時間が許す限り、jubeatに精を注いだ。


 みんなより上手くなりたいんだっ…!

 なんでこんなに熱くなっていたのか…今の自分では、少しばかり理解が出来ない。ただ分かるのは、負けず嫌いがとことん発揮されていたということだけかな??


 愛に雄介を紹介し、雄介の明るさに愛もすぐに打ち解け、俺らは変わらず、時間が合えば一緒にjubeatに明け暮れていた。


 それ以外でも、雄介と食事に行ったり、暇な時は家に遊びに来たりと、いつの間にか雄介の事をと呼べるような仲になってきていたんだ。


 でもそんな雄介にも、まだということは打ち明けられていなくて…


 そんなある時…いつも通り雄介を車で迎えに行き、ゲーセンまで向かってる最中の出来事だった。


「なぁ?傑?」


「ん?なに?」


「お前、彼女作らないのか?」


 お決まりの会話に発展してしまった…

 この瞬間、この質問に発展してしまう時が、いずれ来るだろうと思っていた。そう、俺の一番返答に困る質問だ…


 だって…親友と呼べるような仲になっても、俺はと伝えた瞬間に、今まで積み上げてきた全ての関係性が崩れる可能性だってあるんだ…。


 現に親友だと思っていた人に、カミングアウトをし、否定され…裏切られ…周りに言い振り回されたこともあった…。


 だからこそカミングアウトは、より慎重になっていて…いつの間にか自然と気持ちを塞ぎ込むようにもなっていたんだ…


「ん〜…作らない…かな?」


「ごめん、なんか変なこと聞いちゃったな…」


 えっ…?ご、ごめん…?…俺、なんか聞き間違えたかな…?いつもなら周りの友達に


 ''彼女は作った方がいい''とか

 ''モテそうなのにな!''とか


 そんな返答しか聞いたことがなかった俺は、雄介の「ごめん」に驚きを隠せなかった…


「ゆ、雄介が謝ることないじゃん!」


「…いや、人それぞれ考え方って違うだろ??」


「…えっ…?」


「…誰しも必ず、彼女が必要って訳でも…」


 俺は、どうしていいのか分からなくなった…だって、雄介には可愛い彼女がいるし…俺には彼女が必要な訳でもない…??


 そんなことを考えてる俺に「無神経でごめんな…」と申し訳なさそうに話す雄介…


 外の空気は、温かいはずなのに…

 車内の空気は少し、ひんやりとしていた…


 俺は、俺なりに整理をしてみた。今までとは違う質問の返答や、申し訳なさそうに謝る雄介…それに何より、今まで出会ったことのないタイプの親友…


 あれっ…?俺、雄介になら自分がだと伝えてもいいのかもしれない…そんな風に感じたのは確かだ…。


 よし、勇気を出して…この気持ちを声に出してみたい…!そう思えた瞬間だったんだ。


「雄介…?」


「うん?」


「実は…俺、さ…?」


「うん、ゆっくりでいいよ?」


「…お、俺っ…!ゲイ…なんだ…っ!」


 涙は全く出なかったけど…そんな事よりも、事実を雄介に伝えた時、このという関係が終わる事だけが、俺はとにかく怖かった…

 だから、伝えた俺の声も自然と震えて、伝えきった後の唇も、震えが止まらなかったんだ…


「傑?ありがとう」


「…ふぇっ?!」


「ちゃんと俺に、教えてくれて」


 俺がゲイだと知っても、嫌な顔ひとつせず、むしろ俺にニコッと返してくれる雄介…


「…で、でも…俺…」


「なぁ、傑?誰が誰を好きになろうが、それはその人の勝手だろ?男が男を好きになることに悪いことってあるのかな?…もしさ、それを悪いと思って偏見や軽蔑をするヤツがいるなら…俺はそんなヤツ、大っ嫌いだな」


 俺の塞ぎ込んでいた心の声が…固く閉ざされた扉を開けて、鼓動が加速させてのは事実…


「…雄介…」


「それとな?例え、傑がだとしても、俺はが好きだからゲイだろうが、なんだろうが離れるわけないだろ?」


「ゲイだからとか言って友達、いや親友を辞めるぐらいのヤツ、俺なら…いらないね!」


 もう、声にならなかった…

 運転してるのに、俺の目からは、とうとう涙が溢れ出てきたんだ…


 自分は…と思っていた俺に、素直な気持ちをぶつけてくれて…


 ''傑自身が好きなんだ…''


 そう、この言葉に俺は、救われたんだ…

 後日談、愛も同じことを言ってくれた…


 ''応援したいんじゃない?''


 ゲイでも構わない…

 そうだ、ゲイだとしても…

 俺はあってもいいんだ…

 俺らしくないと、俺じゃなくなる…

 俺らしい俺の事が、みんなは好きなんだと…


 男を好きになったとしても、何もではないのかもしれない…


「傑?もっと自信持てよっ!お前が信じた友達なら…きっと大丈夫だっ…!…少なからず、俺はずっと…お前の味方だから…!」


 前を向いていい、素直でも大丈夫…

 お前は、1人じゃないんだから…


 そんな風に雄介は、俺の背中を押してくれて、自分の気持ちに向き合う事が出来た俺は、この後…信頼出来る仲間が増えていく…。


 その支えになってくれたのが、雄介と愛だったんだ…。


「…雄介…本当にありがとう……運転してるから…横、向けないけど……これからも、よろしく頼みます…」


「ああ、任せとけ!♪」


 雄介…?長く悩んで苦しかったこの気持ちから、救ってくれて…本当にありがとう…

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