第18話:大問題

王歴327年2月15日:南大魔境のキャト族村グレタの家・クリスティアン視点


「それで、モグラやミミズやアリにまで変化できるのだな」


 グレタが確認の質問をしてきた。


「ああ、この10日間、無差別に土や木やを喰らってきたが、その時に一緒に喰らった虫や動物にも変化できるようになった」


「しかも、その虫や動物の持っていたスキルまで手に入れたのだな」


「ああ、特殊な嗅覚や聴覚のスキルで敵を探す事ができる。

 それに、モグラらミミズに変化したら、地中を進む事ができる」


「でも、今変化できるのはスライムだけよな」


「ああ、それが大きな問題なのだよな。

 敵を斃せと考えても、製薬のための材料を喰えと考えても、変化するのはスライムだけで、他の種族には変化できない」


「レッドボアに変化しろと考えても、サイドワインダーに変化しろと考えても、変化できないのは間違いないのだな?」


「ああ、間違いない。

 真剣に、心から念じても、恥かしいのを我慢して大声で叫んでも、変化できない」


「どの種族に変化できるかが分かるのに、変化できないなのか……」


「いや、どの種族に変化できるか分かっているわけではないぞ」


 ステータス表にも変化できる種族名は記載されていなからな。


「だったら何で、レッドボアやサイドワインダーに変化できると判断したのだ?

 あ、自分が喰らった虫や動物、魔物から判断したのだな!」


「ああ、グレタの言う通りだ」


「だったら何で使えるスキルが分かったのだ?」


 しまった、ステータス表に記載されているとは絶対に言えない。


「俺が読んだ事のある文献に乗っている虫や動物、魔獣のスキルから想像した」


「想像しただけだと?

 だったら実際にスキルが使えるのを確認したわけではないのだな!」


 まずいぞ、嘘をついているのがバレてしまう。


「ああ、グレタとの約束を守らなければいけないからな。

 グレタに試すと言ってから、安全な場所で確認するつもりだった」


「だったら、モグラやミミズ、アリに変化できるとは断言できないじゃないか」


「……そう言う事になるな」


 おおげさな事を言うと思われたか、嘘つきだと思われたかもしれない。

 それでも、ステータス表を見られるのがバレるよりはいい。


「……わかったわ、スライムに変化できているのだから、他の種族にも変化できるという前提で検証を続けないと、どんな危険になるかもしれないからな。

 多少おおげさに考えて危険を回避した方がいいのは間違いない」


「そう言ってもらえると助かる」


 なんとか1番知られたくない事からは話題を遠ざける事ができたようだ。


「「「「イングリート!」」」」

「急げ、急いで治療しろ!」


「何かあったようね」


「ああ、どうやらイングリートが大ケガをしたようだ」


「助けてやってくれる?」


「ああ、この村での立場を確保するいい機会だからな」

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